新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
しゅうとばさと嫁(嫁としゅうとめ)
あったてんがの。
あるろこへ仲の悪いばさと嫁があったてんがの。
彼岸がきたてんがの。ばさが
「ヒガーンが来た」
とようたてんがの。こんだ嫁が
「ヒガーンじゃねえ。ヒガンだ」
とようたてが、ばさがこうやいて
「そらね、ヒガーンだ」
とようたれば、こんだ嫁が
「ヒガンだ」
とようたと。
ほうして二人が論してけりがつかねえ。ばさが
「どっちが本当だかお寺の和尚さまのところへ聞きに行こう」
とようんだんが、嫁も
「なじょうもそうしよう」
ということになったと。
ばさは、朝早く起きて、
「あね(嫁)がいかねえうちに、頼んでこう」
と米二升たがいて(かかえて)お寺にいったてんがの。
ばさは
「和尚さま、おまえに頼みがあってきた。彼岸をおれがヒガーンだとようたら、嫁はヒガンだとようた。おまえさんのどこへ嫁が先にくるすけ、来たら、ヒガーンだとようてくんなせえ」
と頼んだと。和尚さまが
「おお、よしよし」
とようったと。
ほうしたら、晩方になって、嫁が米二升たがいて和尚さまのどこへ来たてんがの。
嫁は
「和尚さま、おら、お願いがあってきた。おらばさがヒガーンとようたが、おらがヒガンだとようて二人して論しているろも、わからねえ。ばさがここへ先にくるがらすけ、ほうしたら、ヒガンだとようてくんなせえ」
とようたと。和尚さまは
「ああ、よしよし」
とようたと。
ほうして、つぐの朝、ばさと嫁が朝早々に二人してお寺にいったてんがの。
ばさは
「和尚さま、おらのあねは、ヒガンだとようし、おらは、ヒガーンだとようし、どっちがほんとうでござんす」
和尚さまは、しばらくして
「そらあ、どっちも本当だ。春の彼岸は日が長いすけ、ヒガーンだ。秋の彼岸は日が短いすけ、ヒガンだ」
とようたと。
ほうしてばさもあねも、どっちも米二升損してしもたてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<嫁としゅうとめ>をテーマとしたお話です。