新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

鬼の面

高橋ハナむかしがたり

新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。

鬼の面(嫁としゅうとめ)

あったてんがの。

あるどこにしゅうとばさと嫁があったてんがの。

その嫁が後生願(ごしょうねが)いで毎日毎日お寺参りをしていたてんがの。

しゅうとばさが、じゃんで(やきもちをやいて)後生願いしる嫁が気に入らんで、どうしょうもないと。

嫁は夜なべ仕事に糸を取って、それからお寺参りをしていたと。

ばさはそれがまた気に入らんでどうしょうもないと。

なんとかしてお寺参りをやめさせようと思うたろも、一日の仕事をして、夜なべ仕事までしていくんだから、どうしようもなかったと。

またある晩に嫁は、夜なべ仕事をしてから、隣村の遠いお寺まで行ったと。

ばさは、

「あの道中におっかなげの森があるすけ、こんにゃ(今夜)というこんにゃは、おれが鬼の面をかぶって、出て、たまがして(おどろかして)やる。そうせば、おっかんがって、こんだお寺参りをやめるだろう」

と思うて、ばさは、森へ行って、おっかなげな面かぶって、嫁の来るのを待っていたと。

ほうしると、嫁が

「なんまいだ、なんまいだ」

とぶつぶつお経をいいながら、来たと。ばさは

「よし、嫁のやつ来たな」

とやぶから出て嫁の前に行ったと。

ほうしたろも、嫁はちっともたまげねで、

「なんまいだ、なんまいだ」

とお念仏をようてあえんでゆくと。

ばさはそこで、嫁をたまがす事も、どうしることもならんかったと。

ばさのほうでたまげてしもうて、

「あねが先に行くとおおごっだ。おが先に行かんばならん」

と思うて、近道通って先にうちに来たと。

途中で鬼の面取ろうとしたろも、顔にくっついて、どうしても取れんと。

そのうちにうちについたろも、面が取んねんだんが、布団をかぶって寝ていたと。

「いってきたれ」

とあねが帰って声かけたろも、ばさの返事がない。

「ばさは寝たようだな」

と思うて、あねも寝たと。

ほうして、朝げになってあねがまんましたろも、ばさがいってい起きてこないし、

「まんまにしょうぜ」

とようろも、起きてこない。

「はて、病気にでもなったろうか」

と思うて、布団をまくって見たれば、鬼の面かぶって寝ていたと。

ばさは面の下で、

「あね、あね、勘弁してくれや。おれが悪かった。おまえのお寺参りを止めさせようと思うて、この鬼の面かぶったれば、今度取ろうとしても取れない。おれが悪かった」

とようたと。嫁は

「そうか、そうか、そんげのがん、わけない。お念仏を真剣にようてくんなせえ。そうせばすぐ取れる」

とようたと。ばさが

「なんまいだ。なんまいだ」

と真剣にようたれば、その面がぽろっと取れたと。

それでいきがさけた。

おはなし

……読み比べてみたい昔話

  1. しゅうとばさと嫁
  2. まんじゅう屋の機転
  3. 後家と子ども
  4. ボタとカエル

共に<嫁としゅうとめ>をテーマとしたお話です。

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