ここに掲載しました昔話は、長岡民話の会顧問で芥川賞候補作家でもある新潟県小国町出身の高橋実さんが学生の頃に地元の古老から採話した昔話の内、笑い話や愚か聟噺など可笑しいお話を選びました。同じ語り口の昔話を多数収録した名人選CDを販売しております。味わい深い語りで新潟県の昔話の醍醐味をご堪能ください。
昔、秋山という所に、父と息子と住んでいた。母親の命日にお経をあげてもらおうと息子に坊さんを呼びに行かせた。和尚さんは黒い着物を着ていると父から言われ、寺の屋根の上の烏にお経を読みに来てくれと頼んだ…。
昔、秋山にぽんたろうという子があって、ある日、木の実が沢山なったので柿や栗、おまけにお茶や麩も混ぜて町へ売りに出ることになった。町へ行くと「ちゃっくりがきふ」はいらんかと言う。町の人は困ってしまい…。
昔、じさが畑仕事に出て、ばさが作った米粉団子を食べていると、猿がたくさん来て地蔵様を拝んでいた。翌朝じさは、米粉を顔真っ白に塗って、河原の地蔵の代わりに座っていると、たくさんの猿が出てきて…。
ある時、兎が狸に柴運びを手伝えと頼み、狸の柴に火を点ける。竹藪で兎に会った狸は、今度は尻の穴を竹で縫って糞が出ないようにされ。さらに背中の火傷に蓼の汁を塗ったくられ、しまいには泥の船に乗せられて…。
昔、蛙と兎が餅を喰う算段をしていた。山の頂上で餅を搗いて、その臼を下に転がして、早くその臼に着いたものが全部食べることにしようと兎が言う。兎は転がした臼を追って一目散に駆け出すが…。
昔、大旦那様の乳母が蛇にその蛙を呑まなかったらこのお嬢様を嫁にやると約束した。年頃になった娘を蛇は男に化けて嫁にもらいに来た。娘は千本の針と瓢箪を用意させ、蛇の住む池にむかって行った…。
尼僧が托鉢に出て草鞋が切れたのでお地蔵様から一足もらって土佐の国から他の国に行こうとしたら、いくら歩いても土佐の国ばかりぐるぐる回って外へ出られず、その度に同じお地蔵様に会った。通る人にその訳を聞くと…。
ある所に夫婦がいた。待望の一人息子ができると我儘放大に育て、何もしない男に育った。ある歳取りの晩、貧乏神が出てきた。男は貧乏神がいるから仕事ができないと思い、貧乏神を追い出す算段をしたが…。
昔、甘い名前を自慢している夫婦がいた。サトウカンゾーとサトウミツ。二人はもっと甘い名前の者を探しに旅に出たが、さらに甘い名前の人はなく鼻高だった。幾日後ある坊さんに出合ったその坊さんの名前はなんと…。
昔、若い衆宿へ村の青年衆が遊びに行ったら、灯りが消えたとたん大きな御櫃がドスンと落ちてきた。蓋を開けたら砂糖ぼた餅がたくさん入っていた。次の晩、別の青年衆が行ったら、ドスンと落ちてきて、婆が出てきた…。