あまい夫婦
新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。
むかしあったとさ。
あるところにあまい名前の夫婦があったとさ。
「おらほどあまい夫婦はいねいだろう」
と自慢していたと。
「おらはサトウカンゾー、かかはサトウミツ」
といっていつもまわりの人に言っていたと。
あるとき、二人は旅に出て、あめい名前の人と会ってみたいと思って村を出たと。
あっちこっちあまい名前を尋ねたども、二人よりあまい名前はなく、鼻を高くしていたと。
ほうして幾日が経って、ある一人の坊さんにあったと。
「坊さん坊さん、お前さんはだいぶ旅をしているだろうが、あめえ名前の人知らんかい。おらあサトウカンゾウ、ここにいるかかはサトウミツだが」
それを聞いた坊さんは
「なんだそっげのあめえ名前でしかねえがんか」
というて相手にしなかったと。
そうしたら坊さんに、
「世の中こんげにあめい名前はねえと思うているがんに、ききっぱなしてことはねえこて」
というて怒ったと。ほうしたら坊さんは
「おらの名前をきかせたらお前さん方がたまげるすけ、いわんこて」
というたと。
二人はどうしても聴かせてくれとせがんだと。坊さんは
「そっげに聞きたけや、いってやるこて。おらの名前はアマ川村のアマ水のアマ寺で、名前はモナカアンだ」
というたと。
それを聞いたあまい夫婦はたまげて目がさめたと。
そこでいきがすぽんとさけた。
原 北原勲
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