新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

ぽんたろうの物売り

新潟県長岡市小国町けっこう笑える昔話

ぽんたろうの物売り

新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。

とんと昔があったげろ。

秋山という村に、ぽんたろうという名前の子があったてや。

そこの家の衆は、ばかげになるもんの木(果実の木)を植えていたがだと。

そこの家の衆が

「今年は、ばかげにどうろ、なるもんがなったすけ、町へ売りに行ぎてえいんだね」

というたら、ぽんたろうが、

「じゃ、おがいぐぜ」

というたと。

「なあがいってくれるかい、じゃいいげのがんばっか持って、売りにいってもろうこてや」

というて、とっつぁがいいげの柿や栗をもいだと。

それをまかごにつめて、なるもんばっかも悪いすけというて、お茶や麩を混ぜて四品もって出かけたと。家の人も、

「まあまあ、まちごんようにしていってこいや」

と弁当あつけてやったと。

ほうして一番初めの家へいぐと

「おはよう。きょうは、ちゃっくりがきふを持ってきたが、なじだい」

というたと。その家の衆は、

「これは、奇妙もんが来たが、なんだろうか」

ととんで出てみたと。

「おめえさん、どっからきゃったい」

ときくんだんが、

「秋山から来たがの」

というたと。

ほうして、かごの中見ると、柿や栗がいっぺえあるんだんが、

「こっげのいいがん、家でなっただかい」

と聞くと

「そらぜ」

というんだんが、どうろこうてくれたと。

「おめえさん、ほっげのいい品持っていやるとて、茶は茶で別々、栗は栗で別々、麩は麩で別々というて売らんけえ、だめらごっつぉ」

というて、きかしたと。ぽんたろうは

「おおきに、ありがとうござんした」

と礼いうて、次の家にいったと。ほうしてこんだ

「おはよう。茶は茶で別々。栗は栗で別々、いらんかい」

というたと。そこの家の衆は

「この人はどうかしているがだ」

と思うたろも、かごの中見たら、あんまいい品物だんだんが、ちいとずつ買うてやったと。

「おめえさん、別々なんていうて売るんじゃねえごっつぉ」

とおせえてくれたと。ぽんたろうは、

「どうもありがとうござんした」

というて、そこの家を出て、三番目の家へ行ったと。こっだ、

「栗や柿もってきたが、なじですい」

といったと。

ほうしたら、その家の衆は

「まあ、お前どこでやったい」

と聞いたと。ぽんたろうは、

「秋山だぜ」

というたら

「ほうらかい、ほうらかい」

というて、残ったがんいんな買うてくれたと。

そこの家は、はたごやだったんだんが、

「おめえさん、そろそろ日も暮れたし、泊まっていがんかい」

というてくれたと。

ぽんたろうも泊めてもろうことになったと。

そこの家の衆は、買うたなるもんの銭どうろ払うてくれて、夕飯にはごっつおして食わしたと。

ぽんたろうは、ごっつおがうまいとて、なじょんか喜んだと。女中が来て

「おめえさん、風呂に入ってくだせえ」

というたと。

ぽんたろうは風呂へ入って

「町てや、ちょうほうなもんがあるのう、せえふろの中へ腰掛けがあらあ」

というて、風呂釜の上へ腰掛けたと。

ほうしたとこてんが、熱くて熱くてけつ火傷してしもうたと。

「あちち、あちち、これは大へんだ、大へんだ」

と、でっけえ声出したら、女中がとんできて、

「おめえさん、またどうしたい」

と聞くんだんが、

「せえふろの中の腰掛けに腰掛けていたら、いっときのこまに、けつ火傷してしもうた」

というたと。

ほうしたら、女中は、親切に、

「それは腰掛けじゃなくて、風呂釜というもんだがの」

とおせてくれたと。ぽんたろうは、

「そうらかい、そうらかい」

とたまげたと。そこの家の衆が心配して、

「薬つけてやるすけ、早くやすまっしゃい」

というて、火傷したとこに薬つけてくれて、きれいな布団だしてくれたと。

「町てやこんげのきれいな布団かけるんだかい」

というて、ぽんたろうは、朝げまで一眠りだったと。

朝げになって、家の衆が

「ようべなよく寝られたかい」

と聞いたと。ぽんたろうは、

「気持ちがいんだんが、一ねいりしてよかったぜ」

というたと。

そのうちに、そこの家の衆が、朝飯になじょんかめえぼたもちしてくれたと。

ぽんたろうは、馬鹿で正直だんだすけ

「弁当にもろうて、いぎてんだい」

とたのんだと。

ほうしたら、そこの衆は、めえぼたもちを二つ三つ弁当につめてくれたと。

ほうしてその衆は、

「銭しっかりたがいて、あこらの峠で腹が減ったら、中飯(ちゅうはん)でも食ったいよ」

といとまごいして、ぽんたろうは、家へむかったと。

峠の途中まできたら、腹が減ったんだんが、中飯食おうと思うて広げたら、そのぼたもちがみだめ(※不明)がめたと。

ほうしたんだんが、ぼたもちを谷底へほげ投げて、家へずんずんと来たと。

家へはいって

「かっか、今きたぜ」

と家へ入っていったら、かっかが

「なあ、いんな売って来たかや」

と聞くんだんが

「財布がポンコ、ポンコふくらがっていらあ」

というて、財布はたいてみしたと。

ほうして、つあつあ、かっかに町の話をしたり、銭見したりしたんだんが、家中の人が喜んだと。

泊めてもろうたどこの話しるやら、そのはたごやでもろうたぼたもちを、峠でぶちゃってきた話しるやらしたと。

その話をかっかが聞いて

「なあは、なんともったいねえことしるがだや」

というて、ぽんたろうをつれて、峠までいってみたと。ぽんたろうが、

「ここらあたりら、むこうあたりら」

というんだんが、ぶちゃったあとまでいってみたら、紙にくるまって、ぼたもちがちゃんとあったと。

それを拾って、つぁつぁと二人で、一つずつ食ったら、ばかげにうまかったと。

ほうして、家中で、ぽんたろうに

「よした、よした」

というて、喜んだと。ほうして

「馬鹿ら、馬鹿らとどこへも出さんでいたら、渡る世間に鬼はなしとよくいうたもんだ」

というたと。

これでいきがすぽーんとさけた。

上岩田 木原カノ

おはなし

……もっと読んでみたい昔話

  1. 秋山のぶつ
  2. さるのけつはぬらしても
  3. かちかち山
  4. うさぎとかえる
  5. ばばの皮きた娘
  6. 地蔵様の商い
  7. 貧乏神とわがまま息子
  8. あまい夫婦
  9. はなしの話

おすすめ! 人気の昔話CD

素敵なお話し越後の昔話特集

ちょっと不気味な昔話

じっくり聞かせる昔話

ご存知伝統の昔話

けっこう笑える昔話

渋みと軽みの昔話

ドキドキ嬉しい昔話

楽しい越後の昔話

小国の昔話解説と話し手紹介

名人選CDのご紹介(全11枚)

じっくり聞かせる名人噺CD

とにかく面白くて楽しいCD

バラエティ豊かな名人選CD

昔話CDのご注文ができます。

PAGETOP
Copyright © 越後の昔話名人選CD All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.