新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

ばばの皮きた娘

新潟県長岡市小国町けっこう笑える昔話

ばばの皮きた娘

新潟県長岡市(旧刈羽郡小国町)の昔話。どこか人なつっこい方言とおだやかな語り口調が嬉しい昔語りです。昔話のCDで独特の語り口調がわかると民話の文章が話し始めます。ぜひ昔ばなしを地の語りで聞いてみてください。

とんと昔があったげろ。

ある村に金沢(かなざわ)の権三郎(ごんざぶろう)(旧家・山口権三郎)みてえの旦那様の家があったと。

そこのお嬢さんが、乳(ちぢ)が足らんで、岩田みてえのどこへいる乳母をたのんだと。

そのお嬢さんをぶって(背負って)たな(池)のはたで遊んでいたら、たなの中で、へっびががえるを飲もうとしていたと。

乳母はかわいげになったんだんが、

「へっびや、そのがえる飲まんけや、このお嬢さんがでっかなったら嫁に行ぐが」

というたら、へっびはそのがえるを逃がしてやったと。

お嬢さんが、十七、八になったどき、へっびがいい男になって嫁をもらいにきたと。

その家じゃ、おごとがって

「嫁になんか、くっだんね」

というたと。

ほうしたら、へっびがごうぎ怒って、家中をからがいて、がっぎ(玄関)のどこへ、真っ赤の口あけていたと。

家の衆がおおごとがって、娘に、

「へっびのどこへ嫁にいぐか、どうしるや」

と聞いたと。娘は

「親のいうことはなんでも聞くろも、頼みがある。針千本と、ふくべ一つくれてくんねか」

というんだんが、家じゃ大急ぎで娘のいうがんをそろえてやったと。

へっびはいい男になって、娘の荷物をかついで、先になって歩(あえ)んでいったと。娘が、

「お前さんの家は、どこらい」

と聞くと、男は、

「まあちっと、むこうら」

というて、歩んでいったと。

そのうちに黒姫様の沢みてえのどこへ、でっけえ池があって、

「これが俺の家ら」

というと、池の中から亀や鯛が、ぼんまいおっつあ(軍配団扇(ぐんばいうちわ)?)を持って迎えに来たと。いんな中にはいってから、娘がもってきた、ふくべと針を投げたら、その池が血の海になったと。

家に戻ってみると、家もなんもなくて、しんたくの家が一軒残っていただけだった。

その家の衆に

「おらの家はどうしたい」と聞くと、

「山のげ(土砂崩れ)の下になっていんな死んだ」

というだと。しんたくの家の衆と二人で、

「こっげのとこへ住まんねすけ、江戸へ出ようねか」

と相談して、二人して江戸へ出かけていぐことにしたと。

峠に来た時、しんたくのおっさが、

「水がのみてえ」

というて下へ下りていったと。

だいぶたっても、いっこう来ねんだんが、でっこい声で呼んでも返事がねえだと。

娘が下へ下りていってみたら、おっさの片腕ばっか残っていたと。

仕方がねんだんが、娘は一人で、沢通ったり峠越えたりして歩いていたと。

ほうしたら、遠くの方にテカンテカンと灯りが見える。

これは助かったと思ってその灯めがけてゆくと、家があって婆さまがいたと。

「ひとばん、泊めてくらさい」

とたのんだと。

「泊めてやってもいいろも、ここは鬼の家でおそくなって、鬼が帰ってくるんだんが、鬼の来ねえうちに、籠に入れて、てっじょうにあげるが、それでもいいか」

というんだんが、娘も承知して、天井にあげてもらったと。

日が暮れて、おそくなって鬼が帰って来て、

「婆さま、人臭いが、だれか泊らんかったかい」

と聞いたろも、婆さまは、

「そっげのことはねえ」

としらばぐれていた。

次のあさげ、鬼は、朝飯食って出かけていったと。

鬼がいってから、婆さまは娘にまんまをどうろ食わしてから、

「おれがばばの皮をくれるすけ、それをかぶって行けば、なんに会うてもおっかんねえ」

というて、ばばの皮をくれたと。

山を越えたり、沢を通ったりして行くと、途中鬼が仕事していて、娘をめっけて、

「おい、いい女が来たねか」

というて、そばへ寄ってくるろも、婆さまだったんだんが、

「あきたな、婆さまか」

というて逃げていったと。

娘は江戸に向けてずんずん歩いて行ぐと、途中で日が暮れてしまった。

そこへごうぎな大尽様(だいじんさま)(大金持)の家があったんだんが、

「こんばんは。おれを一晩とめてくんねか」

とたのんだと。その家の衆は、

「おらこのうちの飯炊きにならんか。ここに入って御飯さえ炊いてもらえば、いいがだ」

とたのむんだんが、承知して、飯炊きに使うてもらうことになった。

だいぶ日がたって、その村へ越後のきんどく芝居という芝居がかかったと。

そこの家じゃ、昼湯をたって家中して入り、煮しめのごっつおを持って出かけていったと。

「ばさま、お前も出かけねかい」

とさそうてくれたろも、婆さまは、

「家で留守居しているすけ」

というて出かけなかった。

ほうしたろも、二幕、三幕すぎたら、急に芝居が見たくなってばばの皮を脱いで、

「たった一幕(ひとまく)でいいすけ、見てこう」

というて出かけ、木戸口で見ていたと。

一幕がおわると、すぐ家に帰って、留守居していたと。

あとから家の衆が帰ってきて、夕飯食っているとき、

「今日の芝居はおもしかったのう」

「それにしても木戸口の娘はどこの娘だろう」

「あっげないとしげ(かわいい)な娘見たことがねえ」

と話していたと。娘は、小屋の中で、ばばの皮脱いじゃ、灯りつけて本見ていたと。

それを夜遊びから帰ってきたあんさが見つけて、きれいな娘だったんだんがたまげて、毎晩見いいったと。

ほうしてあんさまが見染めて、そこの家のあねさになったと。

いきがすぽーんとさけた。

小栗山 片桐ミヨ

おはなし

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