新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
笠地蔵(笠地蔵)
あったてんがの。
貧乏なじさとばさがあったと。
じさは山へ行って、しばを刈って売りに行くてが。
バシャバシャ雨の降る日、じさが町へ行く道端に地蔵様がたっていらしたと。
びしょ濡れに濡れているんだんが、じさは雨に濡れた地蔵様をかわいそうに思って、町へ行ってしばを売った銭で笠を買って来てかぶせてやったと。
家に帰ってばさに
「しば売ったろも、地蔵様に笠買ってかぶせたら、米かう銭がたえた」
とようたと。ほうしたら、ばさは
「ようしてくらした。お地蔵様に笠かぶせてきてよかった。おら、お湯でも飲んでいる」
とようたと。
つぐの日、じさが地蔵様の前通ったら、
「じさじさ」
と呼ぶてんがの。
「笠もろうてありがたかった。おまえにお礼がしたい。今夜十二時ごろ、ここへ来ておれの後へ隠れていれや。悪者がきて銭勘定しるすけ、おめえ、鶏(とり)の鳴くまねしれや」
とようたてんがの。
じさは地蔵様のよう通りに、地蔵様の後へ隠れていたと。
十二時ごろに、悪者が来て、袋の中から銭だして、勘定していると。じさが
「ケケケッコウ」
と鶏のまねしたと。悪者達が
「鶏が鳴く、そんげになったか」
とようたと。またちょっとめると、
「ケケケッコウ」
と鳴くまねしたと。
「三番鶏が鳴く。こうしちゃいらんね」
と、悪者は銭おっぱなして、いってしもうたと。地蔵様が、
「じさ、この銭、おめえにくれるすけ、持っていけや」
といわしたと。
じさが喜んで銭もろうて家に来たと。
ほうして金持ちになって一生楽に暮らしたと。
いきがさけた。
<笠地蔵>をテーマとしたお話です。