新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
旅人馬(かくれ話)
あったてんがの。
村の男ショが三人して伊勢参りに出かけたと。
道中で日が暮れて、宿屋に泊まったと。
そこへ主人が草もちをこしらえて出したと。
あんまりうまげだんが、三人が食うたと。
ほうして朝起きて見たら、三人とも馬になって、人間の言葉をしゃべらんねと。
「おおごとだ。この草もち食わんけりゃよかった」
と思っているうちにばくろう(馬喰)が来て、馬三匹買っていったと。
どんどん引っ張って行かれて、三匹の馬は、ある人に買われて、夜になると、一匹は別なとこに、二匹は同じとこに寝せられたと。
一匹の馬が寝せられているどこに、年寄りのじさがきて、
「この原の奥に沼がある。その沼の朝日が当たる真っ正面にススキがある。そのススキの中にしまのススキがある。そのススキを食えば、もとの人間になる」
とようて聞かせたと。
その馬は、朝早く、その沼にいってしまのススキを探して食うてみたれば、もとの人間になったと。
そのススキを刈って二匹の馬に食わせたら、元の人間になったと。
三人は、馬にさせられた宿屋にいって、こっそり草もちを盗んできて、それでうまい菓子を作って、それを持って宿屋に泊まりにいったと。ほうして
「こら、土産だ」
というて、菓子を出したと。
宿屋の亭主がみんな食って馬になったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<かくれ話>をテーマとしたお話です。