新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
見るなの蔵(隣のじい)
あったてんがの。
ある村の男が
「おら、ここの村にいても、ろくに仕事がねえし、旅へ働きに行ってこようや」
と思って出かけていったてや。
ほうして、ずんずんあえんで行って、山道にかかったれば、日が暮れてきたてが。
「おおごとらねか。こんげのどこで日が暮れてしもうて。泊まるとこもねえ」
と思うていたてが。
ほうして、あたり見回したら、向こうの方に明しがめえるてんがの。
そこへ行って
「今晩は」
とようたれば、きれいな娘が出てきたすけ、
「おら、暗うなって、道に迷って困っているすけ、今夜一晩泊めてくれ」
とようと、娘は
「ああ、なじょうも泊まってくんねせえ」
と泊めてくれてごっつぉをしてくれたと。
次の朝になってみたれば、そこの家はきれいなどこで、蔵がいくつも、いくつもならんでいたと。娘が
「おら、これから、隣村へ使いに行ってくるすけ、おまえ、留守番していてくらっしゃい。この並んでいる蔵のどこを開けてもいいが、いっちしまいの蔵だけは、見てくれるな」
とようて、出ていったと。
男は留守番していたろも、見るなとよう蔵が見たくてどうしょうもねえんだんが、こっそり開けてみたてや。
ほうしたれば、梅の木にウグイスが、一羽止まっていたと。男は
「なんだ。こんげのがん。どうして見んなとようた」
と思うたと。ほうしるうちに、娘が帰ってきて
「おまえさん、あれほど見るなとようたがん、見たのう」
とようて、一羽のウグイスになってどっかへたっていってしもうたと。
ほうしたれば、家も蔵も消えて、男は山の奥にぼんやり立っていたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<隣のじい>をテーマとしたお話です。