新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
親を助けた娘(親子噺)
あったてんがの。
侍の兄弟が争ってあにがおじを殺したと。
そのおじには連れ合い(配偶者)と娘があったと。
おじの連れ合いが夫の敵を取るとようて、娘を祖母に預けて旅に出たと。
身なりを隠してあにの家にいって、女中に使ってもらったと。
一生懸命働いて、殿様のすきを見て、夫の仇(あだ)を討とうとして何時も短刀を肌身離さず持っていたと。
それを仲間のものに見つかったと。
それで、おじの連れ合いはろう屋に入れられてしもうたと。
風の便りで出でいった家の方にも聞こえてきたと。
おじの連れ合いが家を出る時、置いていった娘が十七才になったと。
その娘が
「おっかさんを助けよう」
とようて、家を出ていったと。
幾日かしてそのあにの家に着いて、頼んで使ってもらうことになったと。
一生懸命働いて、なんとかして、おっかさんのことを知りたいと思っていたと。
ある日、庭に出てあっちこっち眺めていたと。
そうしたら、蔵があるのが目に付いたと。
そばへ行ってみようとしたら、仲間の人が来て、
「その蔵には、近付いではなりません。その蔵の中には、悪いことをした人が閉じ込められているんだから」
とようんだんが、娘はおっかさんがこの中にいるのだ。
なんとかして助けたいと思っていたと。
殿様の屋敷に偉い人が来て、宴会を開くことになったと。
その時、若い娘さんを十二人集めて、舞を舞うことになって、十一人まで集まったが、あと一人がいなくて困っていると。
そうしたら女中の娘をお願いしたら、とようことになって、十二人で舞うことになったと。
なかでも娘は特別踊りが上手で殿様の目に留まったと。
きりょうもよく、上品で、踊りも上手で、殿様が
「このたびの踊りは日本一だ。国はどこだ、名は何とよう。褒美は望みに任せて取らせてやる。さあ、前に出て申しなさい」
とようたと。娘は恐る恐る前に出て
「母の身代わりになりとうございます」
とようたと。
すると、殿様の顔色が変わったと。
「自分の命をねらった女に、こんなよい娘があったのか」
と感心して、母親をろう屋から出して娘と一緒に国に帰したと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<親子話>をテーマとしたお話です。