新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

スズムシ、マツムシ

高橋ハナむかしがたり

新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。

スズムシ、マツムシ(まま子いじめ)

あったてんがの。

あるどこにしんしょのいい家があったと。

おっとさんとおっかさんがあって、スズムシとよう女の子に、ばあやをつけて、かわいがって育てていたと。

スズムシが十くらいになった時、おっかさんが病気になって死んでしもうたてんがの。

こんだ、おっとさんが、後家もらいなすったてんがの。

後家は、マツムシという女の子を連れてきたてんがの。

後家のおっかさんは、初め、スズムシもマツムシも同じようにかわいがっていたてんがの。

だすけ、おっとさんも安心して江戸へ働きにいったてんがの。

おっとさんがいなくなると、おっかさんは、自分の子のマツムシをかわいがって、うまいものを食わせ、スズムシには、まずいものばっか食わせていたと。

スズムシが生まれた時からきていたばあやは、スズムシがかわいそうだと思って、陰になり、日向になりしてかわいがっていたてんがの。

ほうしたら、後家は、それがにっくくてどうしょうもねえ、なんとかしてばあやを出そうと思って

「ばあや、おっとさんは、江戸へいって当分帰ってこねえすけ、おまえ家に帰ってくれ」

とようたてんがね。ばあやは、

「いや、おらこのスズムシが生まれた時から使ってもらっていたすけ、スズムシが嫁に行くまでここにおいてもらいたい」

とようても、後家はきかねえてんがの。

どうしても家にいげ、いげといわしゃるんだんが、ばあやも出ていったてんがの。

ほうして、後家は、スズムシをにっくがって、ご飯しろ、掃除しろ、草取りしろと仕事ばっかさせておくてんがの。

マツムシには、きれいな着物着せてお嬢様にしてかわいがっていたてんがの。

ほうしているうちに、二人とも大きくなったてんがの。

ある時、殿様が、嫁をもらいなさることになって、娘の子をみんなお城へ連れてこい、その中で一番きれいな娘を嫁にしようということになったてんがの。

だれでも殿様のとこへ嫁にやりたいんだんが、着物こしえるやら、帯をこしえるやら、大騒ぎしていたてんがの。

後家もマツムシにいい着物こしらえてやろうと呉服屋を頼んであれがいいか、これがいいかといろいろ見せて一番いい着物作ってやったろも、スズムシには、なんにも作ってくれなかったと。

そのうちに娘たちは、殿様のところへいぐ日がきたと。

後家は、スズムシに

「おまえは内で掃除したり、留守番しておけや」

とようたと。自分じゃ着飾ったマツムシを連れていったてんがの。

スズムシが家で掃除していると、ばあやがきて

「まあかわいそうに。仕事は、おれがしるすけ、おめえも殿様のどこへいげ」

とようてくれたと。

「そんげのこというても、着物がねえ」

とスズムシがようと、ばあやは、

「きもんなんか、常着(つねぎ)でいいすけそのまんまでいこてや。おっかさが帰ってこねえうちに、帰ってこいや」

とようたてんがの。

スズムシがいってみると、んなきれいなきもん着ているてんがの。

殿様は、高い上で、見ているてんがの。

ちいとめると靴屋がきて、スズムシの足の寸法取っていってしもたてんがね。

ほうして、後家とマツムシより先に帰って知らんふりしていたと。

それから、四、五日めると、殿様の家来が靴を持ってきて

「ここの家の娘を殿様が一番気にいったすけ嫁にきてほしい。いついつかごを持って迎えに来るすけ、この靴はいてきてもらいたい」

とよったと。

後家は、マツムシのことだと思って喜んでいたてんがの。

その日がきたてんが、マツムシに靴はかせようとしるろもどうしても入らんてがの。

後家がナタで足をすっと削ったと。血が出てせつながるども

「我慢しろ、我慢しろ」

と無理に靴を履かせてかごに乗せてやったてんがの。

かごに乗せて山へ登っていったれば、山のてっぺんに松の木があったてんがの。

松の木の下で休んでいたれば、カラスが一羽たってきて、松の木のてっぺんにとまったと。ほうして

「かごの中の娘、あくど(かかと)ガア、ガア」

と鳴いたと。家来の人が

「オーコ、なしたらカラスがおかしなこというて鳴くねか」

と思うて、かごの中の娘のあくどを見たれば血が流れて靴が真っ赤に染まっているてんがね。家来は、

「この娘でない」

と気が付いて、家に連れて帰ったと。ほうして、

「さあ、もう一人のスズムシ出してくれ。嫁になるのは、スズムシだ」

とようたと。後家は

「いや、スズムシは、家にいたはずだ」

とようと、

「いや、それでもスズムシに靴履かせてみてくれ」

と家来がようんだんが、スズムシに履かせたら、ぴったりだったてんがね。

これは、スズムシに間違いないとようことで、スズムシをかごに乗せて連れていって、とうとうスズムシは、殿様の嫁になって、幸せに暮らしたてんがの。

いきがさけた。

おはなし

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