新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
カエルの皮(まま子いじめ)
あったてんがな。
あるどこにおっとさんとお嬢さんがあったてんがの。おっとさんが
「きょうは天気もいいし、花見にいってこうかな」
とようてお嬢さんを連れて行ったと。
ほうしたら、でっこいヘビがカエルを呑もうとしているんだんが、お嬢様が
「かわいげらねか。カエルがヘビに呑まれるが」
とようたれば、おっとさんが
「ヘッビ、ヘッビ、んな(おまえ)、そのカエルはなしてやれば、この娘を嫁にやるが」
といわしゃったと。
ほうしると、ヘビは、くわえていたカエル放したと。
かえるは、喜んでギクシャクしながら逃げていったと。おっとさんは、
「はあてまあ、おら娘を嫁にくれるなんてようてしまったが、おおごとら」
ほうして、二、三日もめいたれば、いつかの男が来て、
「おらこないだカエルを飲もうとした時のヘッビだが、お嬢さんを嫁にくれるとようたすけ、約束通り今日は、もらいにきた」
とようたと。
おっとさんは困ってしもうて、
「娘、娘、おれがほんとうにようたがらすけ、仕方がない。ヘビのどこへ嫁にいってくれ」
とようたと。
娘も承知して、おっとさんから針千本買ってもらって、男のあとへくっついていった。
ほうして広い池へ出ると、男が
「おれここに先入るが、おまえ、おれの後からついて入ってこい」
というて飛び込んだと。
その時娘は、針千本を池の中に投げ込んだ。
ヘビはその針飲み込んで死んでしもうたと。
ほうして、日もくれるし、家にも帰らんないし、困っていると、向こうから、年寄りのばさが来て
「お嬢様、お嬢様、私はおまえさんに助けられたカエルだ。今夜おらどこへ一晩、泊まっていってくれ」
とようて泊めてくれたと。
翌朝になったら、ばさが
「おまえのようなきれいな子は、道中に悪者がいてあぶないすけ、おれがカエルの皮をやる。これを着れば、年寄りのきったねばさになる」
とようてカエルの皮をくれたと。
お嬢様は、その皮を着てズンズン行くと、道端に山賊がいて
「きったなげのばさがきた」
とようて、棒の先に引っかけて投げたら、ばさはだんな様の家の軒端に落ちたと。
それをおんなごが見て、
「奥さん、奥さん、きったなげのばさが軒端にやってきました」
とようと、奥さんは、
「かわいそうだすけ、家に入れてやれ」
とようてその家で火たきばさに使ってやったと。
ある日、若だんな様が、夜遊びにいって、帰っでくると、ばさの部屋で明りが見えるんだんが、
「ばさが何しているのだろう」
と思ってのぞいてみると、ばさは、カエルの皮を脱いできれいなあねさになって、ろうそくの灯で勉強しているてんがの。
若だんな様は、それから病気になってしもうて寝ていたと。
家のショが、あの医者、この医者とたのんでくるろも若だんなのあんばいはえーて(なかなか)治らんかったと。占いがきて
「これは若だんなに好きな女の人があって、それを嫁に欲しいがだすけに聞いてみるがよい」
とようたと。
ほうしるんだんが、おっとさんもおっかさんも若だんなに
「だっか(だれか)嫁に欲しい人があるか」
と聞くろも、なんともいわんがだと。
仕方がねい村中の年ごろの娘いんな寄せて、若だんなのとこへやってみようとようことになって、一人ずつ
「あん様、湯でも茶でもやろかい」
とようて行くども、布団にもぐって返事もしねいと。
あとのこりは火たきばさばっかになってしもうたと。
「ほんね、もうひとり火たきばさが残っていらや」
とようでばさが行くことになったと。
ばさは二階に上がって、カエルの皮を脱いで、きれいなお嬢さんになって降りてきて、
「あん様、湯でも茶でもやろうかい」
とようたれば、若だんながきて
「湯でも茶でもくれ」
とようて起きてきたてんがね。
おっとさんもおっかさんも
「これが家の嫁だ」
と喜んだと。
ほうして、お嬢さんを嫁にして一生仲良く暮らしたと。
それでいきがきれた。
……読み比べてみたい昔話
共に<まま子いじめ>をテーマとしたお話です。