新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
あにとあね(夫婦話)
あったてんがの。
あるどこへ、あにとあね(嫁)があって、仲よく暮らしていたてんがの。
あねが、あんべえが悪くなって、寝ているてんがの。
だんだん悪くなって、死にそうになったてが。あねが
「あに、あに、おれが死んだら、後家もろうろうなあ」
と聞いたと。あには
「なに、おめえが、死んでも、後家なんて決してもろわん」
とようんだんが、あねは、
「ほうせば、後家もろわんと、約束しるけ」
とようたと。あには
「おう、約束しる」
とようたと。あねは、
「ほうせば、おれが死んだら、頭を、半分だけそって如来様(にょらいさま)の下に埋めでくらっしゃい」
とようて、あねは、死んでしもうたと。
あには頭の毛半分だけそって如来様の下へ埋めてやったと。
三十五日、四十九日、一周忌も終えてしもうたと。
ほうしたれば、親類ショも、
「おまえ、一人でいらんねがんに、後家もろうたらどうだ」
とようろも、あには
「いや、かかと約束したすけ、後家なんかいらん」
とようていたと。
そのうちに、だんだん日がたって、親類ショに
「後家もろえ、後家もろえ」
とよわれるんだんが、とうとうもろうたと。
あには、毎日商いに出ているんだんが、かかは留守居しで、糸とっているてが。
あるどき、如来様の戸がギーッと音がして開いたてが。
ほうして、生臭い風がフワフワーッと吹いてくるてが。
ミシンミシンと音がして、頭の毛半分そった、腰から下のない前のかかが出てきて、
「おれが出てきたなんぞ、あにに、ようときかんぞ」
とようて、また、フワァーと消えたと。
あねはおっかのうてどうしょうもなかったと。
ほうしてあねが、毎日留守居していると、死んだあねが、出でくるんだんが、体もやせ、顔色も悪くなってきたと。あには
「おまえ、ばかに顔色が悪いが、なじだ」
と聞いたと。あねは
「いや、なじでもねえ」
とようろも、あにが
「いや、その顔色はただごとでねえ。なにしたがら」
とあんまりあにがようんだんが、死んだかかが出てくることを聞かせたてが。あにが
「ほうせば、おれがうちにいる。おれがうちにいれば、かかもででこねろう」
とようて、うちにいたら、かかもでてこねかったと。
あにもうちにばっかいられねんだんが、また商いにでたと。
ほうしたれば、死んだかかが出てきて
「おれが、あににようなと、あっげようたてがんに、ようたな」
とようて、震えているかかの首もいで、もっていったと。
晩方(ばんがた)、あにが来て見たれば、首のないかかが死んでいたと。あには
「これは死んだかかのしわざにちがいない」
と如来様の下掘ってみたら、かかの首があったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<夫婦話>をテーマとしたお話です。