新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

安寿姫と厨子王丸

高橋ハナむかしがたり

新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。

安寿姫と厨子王丸(親子噺)

あったてんがの。

おとっつぁんとおっかさんと安寿姫(あんじゅひめ)と厨子王丸(ずしおうまる)、それに乳母(うば)の五人で暮らしていたと。

おとっつぁんが京へお上りになり、三年経っても便りがなかったと。

子どもたちが

「おとっつぁんはどうしているやら」

と時々ようので、おっかさんと乳母が相談して、おとっつぁんを尋ねて、行くことにしたと。

四人して旅に出かけたと。

ある村にいったら、どこの家でも泊めてくれなかったと。

仕方なく橋の下へ泊まっていたと。

ほうしたら、山椒太夫(さんしょうだゆう)、悪太夫よう泥棒が橋の上を通ったと。

ほうしたら、橋の下で話し声がするんだんが、泥棒が下へ降りてきて、

「こんげのろこにいないでおらの家に来い」

ようて連れていったと。

夜中に家の女がきて、

「ここの家のショは、明日の朝、早く起きてくるすけに起きるな」

とようたと。

「舟に乗せて人買いに売るのだすけ起きないでいれ」

と聞かせたと。そこのショが

「早く起きれ、早く起きないと、舟が出てしもう」

とようて、子どもが泣いているのにむりやり浜辺に引っ張っていって、おっかさんと乳母は一つの舟に乗せて、安寿姫と厨子王丸は、別の船に乗せて、船は東と西に分かれて行くと。

おっかさんは

「安寿、厨子王」

と呼び、安寿と厨子王は

「おっかさん」

と呼んで、舟が見えなくなるまで、両方で泣きながら呼んでいたと。

舟が見えなくなってから、乳母は

「子どもがいなくなれば、おれはいなくていい」

とようて、海へ飛び込んだと。おっかさんも

「おれも」

とようて、海へ飛び込もうとしたら、泥棒が押さえて、足のあくどの立ち筋を切ったと。

おっかさんは、阿波(あわ)の国へ売られていったと。

安寿姫と厨子王丸は塩たき場に売られていったと。

毎日無理な仕事をさせられ、飯もちっとしか食わせないと。

ある月夜の晩に、二人が夜中に起きて、外へ出て、安寿姫が厨子王丸に、

「つらいでしょう。おれは女だから逃げられないが、おまえは男だから逃げて行きなさい」

とようて、椿の葉を取って、それで水をくんで、別れのさかずきを交わしたと。

厨子王丸にワラジの足跡が見つからないように、片方は反対に履かせて、

「早く逃げて行きなさい。明るくなると、捕まるから」

とようて逃がしてやったと。

厨子王丸がどんどん逃げていったら、お寺があったと。そのお寺に

「助けてくれ」

と頼んだと。

和尚様が出てきて、ありがたいお経と厨子王丸を一緒にして、こもにくるんで、本尊様のところへ下げてくれたと。

そこへ泥棒がきて、

「ここへ小僧が来たろう。早く出せ」

とようろも、和尚様は

「だれも来ない」

とようたと。

泥棒は怒って家探(やさが)ししたと。

どこを見てもいないで

「あの本尊様に下げてあるこも包みを見せてくれ」

とようたと。和尚様は

「あれはありがたいお経が入っていて、さわると目がつぶれるのだ」

とようろも、きかんで、下ろそうとしたら、目がつぶれて見えなくなったと。

泥棒が

「和尚様助けてくれ」

とようんだんが、和尚様が助けてやって、泥棒は逃げていったと。

ほうして、厨子王丸はお寺の小僧になったと。

安寿姫は厨子王丸を逃がした罰で、外の木に逆さにいつけられたと。

そうして、そこを通る人にのこぎり引きにさせたと。

一番先に引いた人はいつまでも頭の中から、離れなかったと。

厨子王丸が助けてもらった村のだんな様は、子どもがないので、子どもをもらうことになったと。子どもたちに

「花を取ってこい。殿様の好きな花を作って持ってきた子どもをもらう」

とようことで、村中の子どもが花を作って持って行くと。

お寺の和尚様は厨子王丸に

「おまえも花を作って持って行きなさい」

とようて、紙をくれたと。

厨子王丸はシコウの花(死華花)しか作ることを知らないから、シコウの花を作って持っていったと。

ほうして、殿様は、子どもたちの作ってきた花を上から下までズーッと見て来られたと。

一番下にあるシコウの花を見て、

「これがおらこの子どもだ」

とようて、お寺にきて、厨子王丸をもらっていったと。

だんな様が厨子王丸に部屋をくれたと。

厨子王丸は、その部屋で毎日一生懸命勉強していると。

だんな様が

「どうしているやら」

と思うて、厨子王丸の部屋をのぞいて見たら、床の間に掛け軸かけて、その前で勉強していると。

よく見たら、その掛け軸は大切な掛け軸で、おとっつぁんが国を出るとき、家に忘れてきたのだったと。

そのためにおとっつぁんは、島流しにされたのだと。

それを厨子王丸が家を出る時、おっかさんが厨子王丸の背中にかずかせて来たのだと。

それを見ただんな様は

「この子は、おら家の若だんなだ」

と家来がかごに乗せて、だんな様の土地を見て回ると。

そうして阿波の国にいったと。

そうしたら、目の見えないおっかさんが粟の鳥追いをしていたと。

「安寿かわいや、厨子王かわいやホウラホイ」

と畑の中の綱を引っ張ると、鈴の音がチリンチリンと鳴ると。

それを聞いた厨子王丸は、

「あれはおっかさんだ」

とそばへ行って、二人は抱きおうて泣いたと。

ほうして、厨子王丸はおっかさんをかごに乗せて、自分の屋敷に連れてきて大事にしたと。

安寿姫を殺した人はみんな島流しにされたと。

おっかさんの目は治って幸せになったと。

いきがさけた。

おはなし

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