新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
じさとあんじゅ様(隣のじい)
あったてんがの。
じさとばさがあって、ばさが焼きもち作ってくれたと。
その焼きもちを持ってじさが山へ行ったと。
昼になったんだんが、じさが焼きもちを出して食おうとしたら、落としてしもうたと。
急いで拾おうとしたら、ゴロゴロと転んでいって穴の中に落ちたと。
じさがついていったら、そこにあんじゅ様がいらしたと。
「あんじゅ様、ここに焼きもちが来なかったろうかの」
とじさが聞いたら、あんじゅ様が、
「焼きもちがきて、あんまりうまげらんだんが、食うてしもうた。そのかわり、おまえに金もうけさせてやるすけ、今夜はおらろこに、泊まらっしゃい。夜中になると、ばくち打ちどもが来て、金をいっぱいならべるすけ、そうしたら、箕(み)をポンポンとたたいて、ケケケッコウと鳥の鳴きまねをしれや。ほうしると、夜が明けたと思うて、金をみんな置いて逃げていくすけ、ほうしたら、その金んーな(みんな)おまえにやるが」
とようたと。
じさが隠れていて、夜中になると、ばくち打ちどもが大勢来たと。
ほうして金をいっぺえ並べているどこに、じさがあんじゅ様のようた通りに、箕をポンポンとたたいて、ケケケッコウと鳥のまねしたら、ばくち打ちどもは、金いっぺえ置いたまんま、んーな逃げていったと。
あんじゅ様がじさに、
「この金んーなおまえにくれるすけ、持って行け」
とようて、もらってきたと。
家にきて、じさとばさが金勘定していると、隣のじさがちょこっと来たと。
「おまえ方、なにそんげに金もうけしたや」
とようんだんが、きんなのこと聞かせたと。
ほうしたら、隣のじさは家にいって、ばさに焼くもちを作らせて、それを持って、山へ行ったと。
焼くもちを出して、わざと転ばして、ついていったら、あんじゅ様がいたと。
「あんじゅ様、ここへ焼くもちが来なかったろうか」
と聞いたら、あんじゅ様が、
「来たろも、うんまげだんだんが、おれが食ってしもうたすけ、今夜おらろこに泊まって、ぼくち打ちが来たら、箕をはたいて、ケケケッコウと鳥のまねしらっしゃい」
とようたと。
夜中になると、ばくち打ちが大勢来て、金を並べていると。じさが
「鳥のまねでなくで、金倉山の大ヘッビとようかな。そうせば、のうかた(一層)おっかんがって(こわがって)早く逃げるろう」
そう思うて、箕をポンポンとはたいて、
「金倉山の大ヘッビ」
とようたと。
ほうしたら、ばくち打ちどもが
「なに、金倉山の大ヘッビだと。引っ張り出してはたっ殺せ」
とようて、隣のじさをいっぺえはたいたと。
じさは血だらけになって逃げていったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<隣のじい>をテーマとしたお話です。