新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
絵姿女房(夫婦話)
あったてんがの。
あるどこにあにが馬鹿きりょうのいい嫁もろうたと。
その嫁があんまりきれいだんだんが、あにが一日中嫁の顔ばっか見て仕事しねえと。嫁が
「あにあに、毎日毎日、おらの顔ばっか見て、仕事しないじゃおらが困るすけ、これを持って仕事してくらっしゃい」
そうようて自分の顔を書いた絵紙を預けたと。
あにはその紙持って仕事にいったと。
ほうして、その紙を棒の先にいつけて、それを見ながら仕事をしていたと。
あるどき、大風が吹いてその紙吹き飛ばしてしもうたと。
あにはたまげてぼっかけて行ったろも、どこへ行ったか、わからねえと。
その紙は殿様の屋敷へ飛んでいって、家来が見付けて殿様のどこへ持っていったと。
殿様はその紙をみて
「これはきれいな娘だ。おれのかかにしるすけ、探して連れてこい」
とようたと。
家来は手分けして探して、その女をやっと探したと。家来は
「この女を殿様のどこへ連れて行く」
とようたと。あにが
「これはおれのかからすけ、連れていかないでくれ」
と頼んだろも、聞かなかったと。嫁が
「あにあに、心配しるな。おれは殿様のどこへ行くろも、秋になったら、殿様の屋敷に柿売りに来てくれ」
とようて、殿様のどこへ行ったと。
しゃべりも笑いもしねかったと。
秋が来て柿が食われるころになったと。
屋敷の外で「柿、柿」と柿売りの声がしたと。
ほうしたら嫁がにこにこしたと。
その顔があんまりかわいかったんだんが、柿売りを門の中に入れたと。
ほうして柿売りと殿様の着物をかえっこしたと。
殿様は、嫁を笑わせようと「柿、柿」とようろも、嫁はいっこう笑わんかったと。
門を閉める時間になって、殿様は外へ出されて、柿売りは本当の殿様になって、嫁は奥方になったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<夫婦話>をテーマとしたお話です。