新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
荒巻のカエルと本与板のカエル(おろかな動物)
あったてんがの。
荒巻のカエルと本与板のカエルがあったてんがの。
荒巻のカエルが
「おら、峠の向こうの本与板村てや、まだ行って見ねえが、今日はまあ、行ってこようかな」
そうようてピョンピョンとんで出かけたてんがの。
ほうして、塩の入峠の上に上がって休んでいたてんがの。
ほうしたれば、本与板のカエルが
「おら峠の向こうにある、荒巻村てや、まだ行ってみねえが、きょうはまあ、行ってこうかな」
そうようて、ピョンピョンとんで出かけたてんがの。
ほうして、塩の入峠を上がっていったれば、荒巻のカエルが休んでいたてんがの。
荒巻のカエルが、
「おら、荒巻のカエルだ。おら本与板の村へまだ行ったことがねんだんが、今日は峠を上がってきて、これから行くとこだ」
とようと、本与板のカエルが
「そうせばおれとおんなじだ。おらも荒巻の村を見ようと峠を上がってきた」
そうようて、峠の上でけつ(尻)ついて話していたてんがの。荒巻のカエルが
「じゃ、おら、本与板の村へ、行かないうちに、この峠の上から見よう」
とようたれば、本与板のカエルも
「おれもここから荒巻の村を見よう」
とようて、二人して、二本足で立って村を見たてんがの。
荒巻のカエルが本与板の方を向いて立ったれば、目が後ろにあるんだんが、てめえ(自分)の村見てるてんがの。
「なんだこら、荒巻の村とおんなじだねか。いがんでもいい」
とようたれば、本与板のカエルも立っててめえの村を見て、
「そうだ。荒巻も本与板とおんなじだすけ、ここから帰ろう」
そうようて、どっちのカエルもてめえの村へ帰っていったてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<おろかな動物>をテーマとしたお話です。