新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
クモの化け物(化け物退治)
あったてんがの。
尼寺で化け物が出て、あんじゅう様を食ってしもうたと。
化け物退治に行く人がみんなみんな殺されてしまうと。
度胸のある人が、
「今夜はおれが行って化け物退治をしる」
とようて、お寺へいったと。
いろりにころをいっぱいくべて、どんどんと火をたいていると。
御坊(ごぼう)が三味線の音を立ててくると。
「今晩は、ここへ一晩泊めてくれ」
とようて入ってきたと。
御坊はたばこを出して
「一服吸ってくれ」
とようたと。
男は手で取らずに火ばしで取ったと。
今度はたばこ入れを出して、
「見てくれ」
とようろも、いいてい(いっこう)手で取らずに、火ばしでばっか取ってほめていたと。
御坊はクモの化け物で、手で取ったら、クモのやじをかけられるすけ、いいていからだにふれねえようにしていると。
御坊が、
「こんだ、化けくらべしょうねか」
とようて、御坊が先に化けて、コロコロと転がって、男のそばにくると。男が
「上手だ、上手だ」
とほめてばっかいて、いっこう手で取らないと。
だんだんちっこくなって、豆粒のようになったと。
ほうしると、男が真っ赤に焼けた火ばしでちょこんとはさんで、どんどん燃えている火の中に投げたと。
ほうしたら、キャッとようて、どっかに行ったと。
朝になったら、村のショが
「化け物を退治できたか」
とようて来たと。血の跡について山の奥にいったら、でっこいクモが死んでいたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<化け物退治>をテーマとしたお話です。