新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
きのこの化け物(化け物退治)
あったてんがの。
あるどこへ、お宮があったてんがの。
そのお宮の裏に、毎晩化け物がいっぺえ出て、歌ったり、踊ったり、しているてんがの。
その村に踊りの大好きなじさがいて、
「その化けもん、おらが行って見届けてくれる」
とようて、ようさる、出かけていったてんがの。
行ってみると、お宮の裏で、小人がいっぺえ集まって、歌ったり、踊ったりしているてんがの。
じさは踊りが大好きだんだんが、その中へ入って踊っているてんがの。
踊りしまに、
「ねら、何の化け物だ」
と聞くと、
「おら、きのこの化けもんだ。おめえこそ、何の化けもんだ」
とようたと。じさは
「ほうか。おら、人間の化けもんだ」
とようと、化けもんは
「ほうか人間の化けもんだか。おめえ、何がいっち嫌いだ」
ときいてきたと。じさが
「おれは、お金の大判、小判がいっち嫌いだ。ねらこそ、なにがいっち嫌いだ」
と聞いたと。化けもんは
「おら、ナスの塩水だ」
とようて踊っていたてんがの。
ほうしているうちに、小人がめいめい、大判、小判を持って来て
「そら、大判小判投げれ」
とようて、じさにぶつけたてんがの。じさは
「おっかね、おっかね」
と踊っているてんがの。
ほうして、じさは
「おら、おっかねすけ、逃げる、逃げる」
といって、家にいったてんがの。
ほうして、ナスの塩水桶にひっとつ(いっぱい)こしらってきて、ひしゃくにくんじゃ
「ほうら、ナスの塩水だ」
とようて、頭からジャンジャンかけたてんがの。
小人は何時の間にか、みんなどっかへいってしもうたてんがね。
それから、お宮には、化けもんが出ねえようになったてんがの。
じさは大判、小判いっぺえもらってよかったとさ。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<化け物退治>をテーマとしたお話です。