新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
猫の恩返し(動物の報恩)
あったてんがの。
山の中に貧乏な村があったと。
その村に貧乏なお寺があったと。
みんな貧乏だんだんが、お寺へお参りする人もなく、何のあがりもねえんだんが、和尚さんは毎日食う米もなかったと。
その和尚さんが猫を一匹飼っていたと。
ある日、和尚さんが猫に、
「なあに食わせるもんが、なんでもねえなったすけ、どこかにいって食わしてくれるろこがあったら、そこへ行って、飼ってもらえや」
とようたと。
ほうしたら、猫がニャオンと鳴いて出ていって、それきり来なくなったと。
隣村のだんな様のお嬢さんが病気になって死んだと。
大勢の人を呼んで、葬式の支度をしていると、真っ黒の雲が空から降りてきて、お嬢さんをさらっていったと。
家の人が大騒ぎしていると、その時、若いお坊さんが托鉢にきて、
「化け物の仕業だろうすけ、隣村にいって、和尚さんを頼んで来いや」
とようたと。
そうしるんだんが、隣村へ行って和尚さんを頼んできたと。
和尚さんがお経をいっぺえ上げたと。
ほうしたら、空から真っ黒の雲がもくもく降りてきて、だんな様の庭にお嬢様を置いていったと。
それから隣村のお寺にお参りする人が大勢来るようになったと。
ほうして、お寺がしんしょう良くなったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の報恩>をテーマとしたお話です。