新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
まごべえのおっかんがりや(化け物退治)
あったてんがの。
あるどこに、まごべえとかかがあったてんがの。
まごべえは、おっかんがりで、ようさる、一人で小便しにいがんねと。
いつもかかからあえんでもろうと。
ほうしるんだんが、かかは、
「こんげのことでどうしょうば、なんとかして直してやらんば」
と思うて、便所の入り口にヒョウタンぶらさげておいたてんがの。
よさるになったれば、まごべえが
「かか、かか、小便しにあえんでくれや」
と頼んだと。かかが
「おめえ、のし、化け物なんかいないもんだすけ、ひとりでいってくるんどんし」
とようたと。まごべえが
「おら、化けもんがいるすけに、おっかねえや。あえんでくれや」
とまた頼んだと。かかは
「毎晩、毎晩、そんげのことようて、おらにあえんでもろうて、便所へ行くが、化けもんなんかいないもんだ。ひとりでいってこいし」
とようてきかなかったと。
ほうしるんだんが、まごべえは、仕方なしに、一人で行ったてんがの。
便所にいったら、ぶらぶらしてさがっているヒョウタンにぶつかって、
「そら、化けもんが出た」
とようて、逃げてきたてんがの。
かかが、ちょうちんつけて見て、
「ほれ見れ、これがなに化けもんだろうば。ヒョウタンだ」
とようんだんが、
「おお、そうだな。こらあ、化けもんでなんかねえ、ヒョウタンだ」
とようて、それからいっこうおっかんがらんようになったと。
ほうしたれば、峠に一つ目の化けもんが出ると。
「まごべえにばれよう、まごべえにばれよう」
というてんがの。
村のもんは、おっかんがって、日が暮れると、だれも近くを通るもんがないてがの。
ほしたら、まごべえが、
「なに化けもんなんか出るんだな、化けもんなんて、ヒョウタンだ。おれが行ってみる」
そうようて、ようさる、出かけていったと。
ちいと行ぐと、一つ目の化けもんが、
「ばれよ、ばれよ」
と出てきたと。まごべえは
「ほらばれれ」
とようて、背中出したれば、化けもんが、手出して、ばれたてんがの。
まごべえは、重くて重くて、どうしょうもねえんだんが、やっと、家にぶってきて、
「ほら、おっれ」
とようて、下ろして、寝てしもうたてんがの。
次の朝、見たれば、かめが一つあって、中に大判、小判がぎっしり入っていたてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<化け物退治>をテーマとしたお話です。