新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
大木と娘(樹木の化身)
あったてんがの。
ある村にばさと娘があったてんがの。
娘は、毎日、山の向こうのある村に働きにいってくるてんがの。
三年の決めで朝早く行って、一日働いて、夕飯を食ってくるがんだと。
夕飯の時、一膳まんまを残して、うちのばさのどこへ、持ってきては、食わしていたてんがの。
ほうして、働いているうちに、あと三月で三年が終えるようになったと。
娘はまんま一膳持って、山道を降りてきたてんが。
ほうしたれば、大雨が降ってきたんだんが、大きな木の下で休んでいたと。
ほしたら、その木が娘にものをようたと。
「おめえは、長々ご苦労だったの。この三年間、おれはみていたが、ほんとによく働いたの。おれはあと三月もすると、殿様の言い付けできこりがきて、切られてしもう。ほうして、三月もしると、船に造られてしもう。おら、船になって海へでるとき、いっこうずらない(動かない)ことにする。ほうせば、殿様が『この船をずらしたもんには、ほうびをくれる』とようすけ、その時、おめえ、船をずらせや。舳先(へさき)に上がって『よいこらどっこい』とよえば、おれは、海ヘズウーッといくすけ、そのほうびでばさとらくらく暮らせや」
とようたと。
ほうして雨も止んで家にきて、ばさにこの話したと。
娘も三年の勤めが終わったと。
その大木は三月後に切られて、三月後にりっぱな舟につくられたと。
海へ出してずらそうとしるろも、いっこう舟が動かんと。
殿様が
「この舟ずらしたもんは、のぞみどおりのほうびをやる」
とようたと。
人がいろいろしてみるうも動かんと。
そこへ娘が舳先へ上がって
「よいこらどっこい」
とようたら、舟がスイーッとずったと。
殿様が喜んで
「のぞみのものをほうびにやる」
といわしたてんがの。娘は
「それじゃあ、ばさがらくらく食われるように、米と着物をもらいたい」
とようて、米と着物をいっぺえもろうて、安楽にくらしたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<樹木の化身>をテーマとしたお話です。