新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
キツネのちょうちん(人とキツネ)
あったてんがの。
あるろこに、炭焼きじさがいたと。
山で炭を焼いてそれを町に売りに行くと。
ある日、町からの帰り道、山道にかかって真っ暗になってしまったと。
生暖かい風がフワフワと吹いてきて、なんだか気味の悪い晩だったと。
じさがひょいと前のほうを見ると、きれいなお嬢様がちょうちんを持ったお供を連れて、歩いているてんがの。じさは
「あのちょうちんについていこう」
と気をもんで歩くろも、続かんねえてんがの。じさは
「こら不思議だ。キツネだかも知らんな」
と思ってよく見たれば、供のけつにでっかいしっぽが出ていると。
じさはおかしくなって、
「そのしりっぽをちっと引っ込ませれや」
とようたら、しりっぽを半分引っ込ませたと。
またちっとめると、しりっぽをみんな出して歩いていると。じさが
「おい、化けるなら、もっと上手に化けれや。そんげの化け方していると、つかめるぞ」
とようたら、キツネはたまげて、お嬢様も供もキツネの姿になって、ちょうちんをおっぱなしてやぶの中に逃げていったと。
じさはちょうちんを拾って家に持ってきて、大事にしていたと。
つぐのようさる(夜)、トントンと戸をたたく音がしるんだんが、じさが戸を開けて見たれば、きれいなお嬢様が立っていると。ほうして
「ようべのちょうちんを返してくんねせい」
とようたと。じさは
「このちょうちんおら大事にしもうておこうと思っている」
とじさがようと、
「おらキツネだ。娘を嫁にくれるに、今夜、その行列にちょうちんがいるすけ、どうか返してくんねせい」
とようたと。
じさが返してやったら、その晩の夜中にキツネの嫁入りがあって、ちょうちんがいくつも見えたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<人とキツネ>をテーマとしたお話です。