新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
ムジナととっつぁ(化け物退治)
あったてんがの。
ある村にムジナが出て、人を化かしてみんなが困っていると。
勇気のあるとっつぁが
「よし、おれが退治してやる」
とようて、ナタ一丁持って山へ行ったと。
ムジナの出るようなでっかい木の上に登っていったと。
そのうちに、日が暮れて真っ暗になったと。
とっつぁが木の上で、ムジナが来るか来るかと待っていたと。
村の方からちょうちんの明りが見えたと。若い男がちょうちんを持ってとっつぁのいる木の下へ来て、
「とっつぁ、ばさが死にそげだすけ、早く来てくらっしゃい」
とようたと。とっつぁは
「ばさが死んでも、おらいがん」
とようたと。
その男は行ってしもうたと。
またちいとめると、さっきなの男が来たと。
「とっつぁ、とっつぁ。ばさが死んだすけ、早く来てくらっしゃい」
とようたと。とっつぁが
「ばさが死んでも、おらいがん」
とようたんだんが、男は行ってしもうたと。
またちいっとめると、こんだそうれい(葬礼)が、出てきたと。
大勢で棺桶をかたねてくると、チンドングサリ、チンドングサリといろいろの音させてとっつぁの方へ来ると。
とっつぁのいる木の下へ来ると、棺桶を下ろして、お経をグダグダと申して行ってしもうたと。
そうすると、棺桶がブツンとよう音がして、中から真っ青い顔をしたばさが出てきたと。
とっつぁがナタをしっかりたがいて待っていると、ばさがムザンムザンとほうて木に上がってきて、とっつぁのいる木に登ってきたと。ほうして
「おれが死んだてがんに、なぜ来ねや」
とようて、とっつぁのそばまできたと。
とっつぁがナタを振り上げてばさの頭をはたいたと。
キャッとようて、下へ落ちたと。
とっつぁは木の上で夜の明けるがん待っていたと。
そのうちに明るなって、村のショが
「退治できたか。退治できたか」
とようてきたと。
とっつぁが木から下りてみれば、でっこいムジナが死んでいたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<化け物退治>をテーマとしたお話です。