新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
ツルの涙(動物の報恩)
あったてんがの。
ある村の子どもが山へたきぎを取りにいったてんがの。
のどがかわいて谷間へ水を飲みにいったてんがの。
ほうしたら、足の長い、白い羽の鳥が足痛めて、たたんねでいたてんがの。子どもは
「こらあ、気の毒だ」
と思うて家に連れてきて、傷の手当てをしてやったてんがの。村のもんが
「まあ、きれいな鳥だ」
とようて見にくるども、なんとよう鳥だか分からんと。
そうしたら、年寄りのじさが
「こらあ、ツルとよう鳥だ。ツルはめでたい、いい鳥だ」
とようんだんが、村のショがえさをやりに来てくれて、ツルの傷は治ってゆくと。
そのうちにツルの傷はきれいに治ったと。
村に田植えが始まるてがんに、いつまでめても雨が降らんで、水がなくて田植えしらんねかったと。村のもんが
「ツルが来ていいことがあるてがらろも、悪いことばっかだ。いつも田植え時には雨が降るんだろも、ツルがきてからいっこう雨が降らねえ」
とようて、だれもえさを持ってくるもんがいなくなったと。
そうしるんだんが、ツルを連れてきた男の子は、ある日ツルを連れて山のふもとの谷間へ行ったてんがの。
「ツル、ツル、きょうはおめえと別れだぞ。おめえがきてから、田植えに雨が降らねえとようて、えさを持ってきてくれる人もねえなった」
そうようてツルを放してやったと。
そうしたら、ツルはボロンボロンと涙を流して泣いていたてんがの。
その涙が谷間を流れて、川になっていくらでも水があるようになったてが。
そうして村は楽々と田植えが終えたと。
村のもんがツルのどこへお礼にいったろも、もうツルの姿は見えなかったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の報恩>をテーマとしたお話です。