新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
尻切り稲荷(おろかな動物)
あったてんがの。
とっつぁとかっかがあったてんがの。
とっつぁが馬の背中にイモをつけて、町に売りに行き、帰りに魚を買ってつけて来るてんがの。
山道にくると、前の方に年寄りにばさがあえんで(歩いて)いると。
とっつぁが、そばへよると、
「とっっあ、とっつぁ、おれをその馬にちっと乗せてくんねか」
とようんだんが、かわいそうだと思うて、馬に乗せてやったと。
たいてい行って、後を見たら、ばさがいねえと。
「ばさを落としてしもうた」
とたまげて、そこら見たろも、いねえし、背中を見たら、こ(買)うてきた魚がないと。
「これはきっと、キツネにだまされた。ヨーシ、明日はきっとこの敵をとってやろう」
思うて、翌日また、馬にイモをつけて町へ行ったと。
帰りには、また馬の背に魚をつけてきたと。山道へくると、またきんなのばさが先になってあえんでくると。
とっつぁのそばにくると、
「とっつぁ、とっつぁ、おれをちーとでいいすけ、その馬に乗せていってくれ」
とようたと。
とっつぁはばさをなわでしっかりとしばったと。
ばさがとっつぁに
「とっつぁ、そんげにしっかりしばらんでいてくれ。手がいたくておごっだいやあ」
とようたれば、とっつぁは、
「ばさが落ちるとおおごとらすけ、しっかりしばる」
とようて、しばったてんがの。
ちーとめると、ばさが、
「しょんべん(小便)がでたいすけ、おろしてくれ」
とようたと。とっつぁは、
「そこへこけ」
とようてたと。
またちいとめると、ばさが
「とっっあ、あっぱ(大便)が出るすけ、おろしてくれ」
とようたと。とっつぁは、
「もうちっとだすけ、がまんしれ」
とようて、どんどん急いでうちへ来たと。
「かか、今来たぞ」
とようたら、かっかが、真っ赤に焼いた火ばしを持ってでてきたと。
とっつぁが、それをばさのけつ(尻)へくっつけたら、ばさは
「キャー」
とようて、しっぽを出したと。
そうして、キツネは大やけどをして、死んでしもうたと。
穴を掘って、その上にこぐら(ほこら)を立ててくれて、
「尻切り稲荷大明神」
と書いてくれたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<おろかな動物>をテーマとしたお話です。