新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
三匹の田(動物の報恩)
あったてんがの。
ある村にしんしょうのいいだんな様があったと。
ある時、隣の家のじさがタヌキを一匹取って持ってきたと。じさは
「このタヌキは悪い奴で、おれがこないだ、町から帰って来る時、ばさに化けて、買ってきた魚、んな取って食ってしもうた。今日はつかめたすけ、タヌキ汁にして食おういの」
とようたと。
だんな様がタヌキを見たら、タヌキが手をついて涙ボロボロだして謝っているがだと。だんな様は
「かわいそうに。今日だけはこのタヌキ勘弁してやって放してくれ」
と頼み、タヌキに
「タヌキや、こんだ人を化かしたり、人の物を取ったりしんな」
とようて、綱を切って放してやったと。
タヌキは喜んで山へ逃げていったと。
それから幾月もたってから、だんな様が山の荒れ地に行ってみたら、いつの間にか田は起こされてきれいになっていたと。
「だれが起こしたのだろう」
と思うて、家にきて聞いてみるろも、だれも知らんと。
昼間行って見るろも、だれもいないと。
夜、だんな様が隠れて行ってみていたと。
ほうしたら、助けてやったタヌキと、そのかかと、小タヌキと三匹で、
「やっとこどっこい、そら起こせ。やぶも木もそら起こせ。秋には稲の穂が垂れる」
と歌いながら、鍬で掘り起こしていたと。だんな様は
「おや、助けてやったタヌキだ」
とたまげていたと。
ほうして、秋になったら、タヌキのしっぽのようなでっこい穂が出たと。
それでその田んぼを三匹の田とようたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の報恩>をテーマとしたお話です。