新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
ハチの恩返し(動物の報恩)
あったてんがの。
あるどこへしんしょうのいいあきんど(商人)があったと。
そこの家じゃ酒も造っていてごうぎな酒蔵があったと。
その酒蔵の中ヘハチがはいって酒樽の縁(ふち)へいっぺえくっついていると。
若いショがハチに刺されると困るてがで、ハチを棒でたたいていると、主人が出できて
「ハチをかまうな。かまわんけりゃ人を刺すことはない」
そうようて、酒粕を庭へ投げたと。
そうしたら、ハチはみんなそこへ寄ってきて粕をなめていたと。
ある時、主人が馬10頭に品物つけて、若いショ大勢連れて、行ったてんがの。
山賊の出そうな、おっかなげの山道を通って行くと、
「こっげなどこは急いで通った方がいい」
と気をもんで急いで行くうちに、山の林の中から、ワハハとようて山賊が出てきたと。
見ると、鉈振り上げて、前の道も後ろの道もふさいではさみうちにしたと。
ほうしるんだんが、若いショも、馬方も、荷物を置いて逃げたと。
主人もおっかねんだんが、木の陰に隠れて見ていたと。
その時、ハチが一匹出できて、空へ向かって飛んでいったと。
主人は馬も荷物も取られてしもうておおごとらと思うていたら、空から赤い雲のようなものが近付いて来ると。
良く見ると、ハチのかたまりで山賊の頭や顔や手などめちゃくちゃに刺したと。
山賊はたまげて馬も荷物も置いて逃げていってしもうたと。
ハチのおかげで荷物は主人のどこへ戻って助かったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<動物の報恩>をテーマとしたお話です。