新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
キツネと山伏(人とキツネ)
あったてんがの。
山伏が山道を通ってくるとき、キツネが昼寝をしていたと。
たまがしてくっどう(くれよう)と思うて、持っていたほらの貝をキツネの耳のそばで威勢よく吹いたと。
キツネはたまげて飛び上がって逃げたと。山伏は
「おもしろかった」
と思って下の村まできたと。
まだお昼ごろだと思っていたてがんに、薄暗くなってきたと。
そのうちに、真っ暗になってしもうたと。
「さて、泊まるとこはないかなあ」
とそこらを見たれば、すぐそばに明りが見えると。
そこへ行って
「今晩一晩泊めてくんなせえ」
と頼んだと。
ほうしたら、じさが出てきて、
「なじょうも、泊まらっしゃい」
とようたと。
山伏が家に入ると、じさが
「さっきばさが死んだすけ、隣へ行ってようてくるすけ、休んでいてくれ」
とようて、出ていったと。
ほうしると、寝床の方で音がしるんだんが、見たら、青い顔をしたばさが出てきたと。
ほうして山伏のそばにくると、
「山伏どん、よう泊らした」
とようたと。
山伏はおっかんなって、後へさがると。またばさがそばへきて
「山伏どん、よう泊らした」
とようたと。山伏は
「やれおっかな」
と後へさがると。こんだ、ばさが
「山伏どん、よう泊らした」
とようて、山伏の手につかまろうとしたと。山伏が
「やれ、おっかな」
と後へ下がったら、川の中ヘドボンと落ったと。
橋の上でキツネが山伏をおどかしていたのだと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<人とキツネ>をテーマとしたお話です。