新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
無筆の手紙(知恵者話)
あったてんがの。
あるどこへばさと娘があったと。
娘は向こうの村に嫁にいったと。
娘は嫁にいったまんま、いっこう家に来ないと。
ばさは
「あの子は嫁にいったまま家にも来ないで、なじょしているやら」
と心配していたと。
ちょうど、隣の家のショが山の向こうにいがしゃるとようんだんが、
「娘のどこへ手紙を持って行ってくらっしゃい」
とばさが頼んで、紙に木の股(また)五つ書いて渡したと。
隣のショは
「このばさ、手紙書くなんてごうぎだね」
とたまげていたと。
ほうして、娘のどこへ手紙を届けてやったと。
娘はその手紙を開いてみて
「ああそうか。おばまた、んなまた、こねまた、なんでまた、こいやまた。とようのだな。おれが家にこねえすけ、来いてがら」
とそんまわかったと。
娘は
「おら、返事書くすけ、ちっと待つてくらっしゃい」
とようて、チョコチョコと書いて渡したと。
隣のショは
「こらまた、娘も手紙書くがらか」
とたまげていたと。
ばさがその手紙開けてみたら、一枚の紙に墨がすきまもないほどに塗ってあったと。
ばさはそれを見て
「おばは、すき(暇)がなくって来られない」
とすぐわかったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<知恵者話>をテーマとしたお話です。