新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
和尚様と三人の小僧(和尚と小僧)
あったてんがの。
ある寺に和尚様と三人の小僧があったと。
和尚様はいつも小僧に隠してうまいもん食うているてんがの。和尚様は
「小僧小僧、このうまいもんは、大人が食えばなんともないが、おまえらのような子どもが食えば、死んでしもうがら」
とようてきかせていらしたがらと。
あるどき、和尚様は檀家へお経読みにいがしたてが。
その留守に三人の小僧が
「和尚様は、このうまいもんは、自分のような大人が食えば死なないし、子どもが食えば死ぬとようていらしたが、そんげんことはないと思う。ちっと食うてみよう」
そうようて、一人の小僧が、食うてみたら、ばかうまいてが。
あんまりうまいんだんが、三人してそのうまいもん、いんな(みんな)食うてしもうたと。
小僧は
「はて、このうまいもん、いんな食うてしもうたが、和尚様が帰ってきたらどうしょう。いんなしてこの部屋掃除しよう」
そうようて
「ここには和尚様がつぼき(庭木)を鉢にいれて、大事に飾っておかしゃる」
そうようて掃除したと。
一人の小僧が鉢をクワンとたたいて割ったと。二人の小僧が
「こんげのことして和尚様がどっげに怒らっしゃるかわからんぞ」
とようと、小僧が
「おらに任しておけ。和尚様には、大事な鉢をこわしたんだんが、あのうまいもん食えば死ぬてがで、あんまり申し訳ないすけ、食ったとようことにしよう」
そうようことに決めておいたと。
ほうして三人の小僧は、仏檀の前で泣いていたと。
そこへ和尚様が帰ってきて、
「ねら、三人してなんで泣いているがら」
と聞くんだんが、
「和尚様、大変申し訳ないことをしました。和尚様の大事なつぼきの鉢を割ってしもうた。これは死んで謝らねばならんと思うて食えば死ぬというあのうまいもんを三人で食った。もう死ぬか、もう死ぬかと思うているうちに、んな食ってしもうた。いっこう死ねないんだんが、こうして泣いているがのだ」
と小僧がようたと。
和尚様もどうしょうもねえんだんが、
「おう、そうか。もう泣かんでもいいや。鉢を割ったのも仕方がねえ。うまいもん食われてしもうても仕方がねえ」
そうようていらしたてが。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<和尚と小僧>をテーマとしたお話です。