新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
彦一とタヌキ(知恵者話)
あったてんがの。
あるろこへ彦一とよう男があったてんがの。
ほうして、人をだましたり、道化たり、たまがしたりするのが馬鹿上手だてんがの。
彦一の裏山にタヌキが一匹すんでいて、それがまた、人をだましたり、たらかしたりするのが上手で、彦一とどっちが上手だというくらいだったと。
あるようさる(夜)、彦一が用事にいって、帰り道にタヌキがよんだてんがの。
「彦一どん、彦一どん、おれは、おまえの裏山に住んでいるタヌキだが、おまえのいっちきらいのがんは、なんだ」
とようたと。彦一は、
「おれのいっち嫌いのもんはまんじゅうだ。まんじゅうはおっかのうて、おっかのうて」
とようたと。タヌキは
「えっ、そうか」
とびっくりしたと。
そうして、彦一が家に帰ると、タヌキがドンドンまんじゅうを投げ込んだてんがの。
彦一は
「ああ、おっかね。こわい」
そうよいながら、まんじゅうをドンドン食うているてんがの。
タヌキは
「そらあ、いっきび(いい気味だ)だ」
と思うていたてんがの。
彦一はまんじゅうをみんな食うと、お茶を出して
「ああ、うまかった」
とお茶を飲んだてんがの。
ほうしたれば、タヌキはそれを聞いて
「いやこら、彦一にだまされた」
とくやしがっていたてんがの。
つぐの日、彦一が田んぼへ行って見たれば、たんぼの真ん中に、石ころがこってい(いっぱい)こと入っているてんがの。
ほうしたれば、彦一がでっこい声で
「こらあ、またよかったねえか。石ころ三年とようて、三年は肥やしをしないでよかった。もうかった」
とようてるてんがの。
タヌキは陰で聞いて
「こら、またしくじった」
と思うていたてんがの。
ほうして、つぐの日、彦一が田んぼに行って見たれば、田んぼの中の石がいんなねえなっていたてんがの。
彦一は
「いやあ、石ころでよかった。馬のくそでも入っていたら、おおごとだった。馬のくそだったら、田んぼは、もう使いもんにならねえから」
とようたと。
つぐの朝、田んぼに行って見たれば、馬のくそがいっぺえ入れてあったてんがの。
こんど彦一は黙って喜んでいたてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<知恵者話>をテーマとしたお話です。