新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
どろぼう(知恵者話)
あったてんがの。
あるどこへじさとばさがあったてんがの。
ある晩泥棒が入ってきたてんがの。
じさが気がついて
「泥棒が入ってきたすけ、今夜一つたらかしてやろう」
そう思うて、ばさ、ばさと起こしたてんがの。じさが
「ばさ、どうしても起きない、いいまじないがあるすけ、起きてくれ」
とようたら、ばさは目をこすりながら、
「この夜中に何そんげのことよわれる。おらねぶとうてどうしょうもねえ」
とようたら、じさが
「まあ、そういわんで聞いてくれ。おらがよそへ泥棒に入れば」
とようと、ばさは
「じさ、何ようているがだ。泥棒になんか入ってどうしるがだ」
とようたと。じさが
「たとえばの話だ。よその家に泥棒に入って、もちつくうすを探して、それに自分の着物をかける。そうせば、どんげのことがあっても目を覚まさねえ。ほうして、ゆっくり盗んでくる」
とようて、じさは、寝てしもうたてんがの。
泥棒は
「こらあ、いいこと聞いた」
と喜んで、うすを探して自分の着物を脱いでうすにかぶせたと。
ほうして、じさもばさも寝ている部屋へ行って、たんすの引き出し開けたてんがの。
ほうしたれば、じさが
「泥棒」
と怒鳴ったんだんが、泥棒はたまげて、裸で逃げていったてんがの。
泥棒は自分の着物取られてしもうたてや。
じさは笑っていたてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<知恵者話>をテーマとしたお話です。