新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
金を拾ったら(愚か者話)
あったてんがの。
あるろこに、貧乏の男が二人いて、借金して金をなす(返す)のに困って夜逃げしたと。
どんどん逃げて峠を越してから、話をしながらあえんで(歩いて)いたと。
一人の男が
「あえんでいるうちに、金を拾ったらどうする」
とようたら、もう一人が
「そうせば、おれのどこへ、半分よこせや」
とようたと。
「ばかような。おれが拾ったもんだ」
「いや、おれのもんだ」
と二人して、取っ組み合いのけんかをしていたと。
ほうしると、向こうから旅の男がきたと。旅の男は
「おめえがた、なんでそんげのけんかをしている」
と聞いたと。一人が
「おれが拾った金を分けてくれない」
とようと、もうひとりが、
「いや、おれが拾ったもんだすけ、おれのもんだ」
とようたと。旅の男が、
「おめえがた、おれがその金分けてやるすけ、いったい幾ら拾ったのだ」
と聞いたと。一人が
「いや、まだ拾わんのだ。もしか拾ったらというのだ」
とようたと。旅の男は
「まだ、拾わんうちにけんかなんかして、あきれた人だ」
と大笑いしたと。
いきがさけた。
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共に<愚か者話>をテーマとしたお話です。