新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
カモ取りごんべえ(誇張話)
あったてんがの。
あるどこへ権兵衛とよう漁師があったてんがの。
権兵衛はカモ取りが上手で、人がカモ取り権兵衛とようていた。
権兵衛は
「カモの一羽二羽取ってもおもしろくねえ。一度に百羽も二百羽も取りていもんだ」
そう思うていたんだんが、考えてわなを百もこしらえて氷の張った池に並べて、わなの一つ一つに長いなわを付けて、そのなわをてめえで持って林の中へ隠れていたてんがの。
一羽飛んできて、わなに引っかかってギャオンと変な声を出したてんがの。
ほうしているうちに順々に飛んできてわなに引っかかった。またも後から後からわなに引っかかるてんがの。
「じゃあ、勘定してみよう」
と思うて、勘定してみたら、九十九羽かかったと。
「おう、もう一羽だ」
と権兵衛は喜んでいたてんがの。
ほうしたら、一羽のカモがバタバタバタとでっこい音立てたてんがの。
その音にたまげて、九九羽のカモがいーんな(みんな)羽ばたきして、たとうとしたてが。
「こら(これは)、逃がしてなるんだな(なるもんか)」
と、権兵衛は九九本のなわをしっかり押さえてふっぱっているてが。
「こら、止めてくれ、止めてくれ」
とようて、いくら引っ張ってもカモの力にはならんで、カモが一度に空へ飛び立っていくてが。
権兵衛もなわにぶら下がって、放せば落ちるんだんが、仕方なしになわにつかまっていたと。
いいかんたったらなわが切れて、権兵衛は、百姓がワラを積んでいるどこに落ちて、助けてもろうたと。
ほうしるんだんが、権兵衛はその百姓の家で畑仕事のあいほう(手伝い)をしていたと。
畑へ粟の穂刈りにいったと。
その粟の穂がばっかでっこかったと。
権兵衛がツルツルッと粟の穂の上に上がったどきに、丁度強い風が吹いてきて、穂が風に飛ばされて、権兵衛は穂に乗ったまま飛ばされてしもうたと。
ほうして、町のかさ屋の庭に落ちたと。
かさ屋の主人が
「おめえ、どこから来たや」
と聞くんだんが、権兵衛は
「おら、こんげの遠いどこへ来てどこも知らねえ。いくとこがねえ、おらを使ってくれ」
と頼んで、かさ屋へ使ってもろうことになったと。
ある時、かさを持ちながらポンとして立っていたてが、風が吹いてきて、広げていたかさも権兵衛も一緒に空に吹き上げたてが。
「こらまた、おごとらねか」
と思うているうちに、お寺の五重の塔の上に落ちたと。
「助けてくれ、助けてくれ」
ようたれば、和尚様が聞こえつけて、釣り鐘をたたいて村のショを集めて
「あの屋根の上に人がいるすけ助けねばならん。おめえ方、家へ行って、ふとんを持ってこい」
といわしたと。
ふとんの山を作って、和尚様が
「ここへ降りて来い」
といわしたと。
権兵衛が飛び下りたれば、あんまり高いんだんが、威勢がついて目から火が出て、ふとんにもついて、権兵衛も焼け死んでしもうたてんが。
いきがきれた。
……読み比べてみたい昔話
共に<誇張話>をテーマとしたお話です。