新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
豆の木(誇張話)
あったてんがの。
じさとばさがあったと。
じさは山へ行ったし、ばさは庭掃いていたと。
でっこい豆があったと。
ばさはこんげのでっこい豆は、いって食おうか、種にしようかと思うていたら、じさが帰ってきたと。
じさは、この豆を種にして植えたと。
豆は芽を出して、ズンズン伸びて、天じくまで伸びていったと。
ばさは喜んでどんげな豆がなるろうと楽しみにしていたと。
秋になったらデッコイ豆がなって、はじけて落ちるようになったと。ばさは
「じさじさ、今日は天気がいいし、豆もぎしてくらっしゃい」
とようて、デッコイ袋を貸してくれて、じさはまめもぎに上がっていったと。ばさが
「おまえ、もぎもぎして上がったら、重いろうすけ、てんじょうへ先上がって、もぎもぎして、おりらっしゃい」
とようたと。
じさは豆の木に上って行くうちに天じくに出てしもうたと。
天じくは、広くて、きれいだったと。
そこで遊んでいるうちに、日が暮れてしもうたと。じさは
「おら、豆もがねえうちに、日が暮れてしもうた」
とあえんでいったら、きれいな家があったてが。
そこへ泊めてもらおうと思うて頼んだら、きれいなあねさが出てきて、水を出してくれたと。
その水がばかうめえかったと。
こんだ、中に入れてくれて、黒いもん出してくれたと。
それがまた、ばかうめえかったと。
つぐの日になって、あねさが、
「おれが使いに行ってくるすけ、ちっと留守居してくんねせえ」
じさが留守居して、つぎの部屋を見たら、昨日飲んだような水がタクンタクン垂れていたと。
その水飲んだら、昨日と同じにうめえかったと。
つぎの部屋見たら、昨日食った真っ黒いもんが部屋いっぱいになっていると。
それを取ろうとしても、取らんねえ。
そこへあねさが戻って来たんだんが、じさが
「こら何だ」
と聞いたと。あねさは
「そら、子どものへそだ。ようだち(夕立)の時に、裸で寝ている子どものへそを抜いたがだ」
そうようて聞かせたと。あねさが
「じさ、これから夕立を降らせるすけ、あいほう(手伝い)せや」
とようたと。
じさが、鏡でピカピカ光らせたり、うめえ水を桶に入れて空からまいたと。
それがちょうどいい夕立になると。
じさは、雨降らしているうちに、空が高いんだんが、目を回して、空から落ちたと。
落ちるひょうしに、目玉が飛び出してしもうたと。
じさは、そこら探したら、石ころがあったと。
それを目玉と間違えて目の中に入れたと。
ほうしるんだんが、じさがめくらになってしもうたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<誇張話>をテーマとしたお話です。