新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
かんなり様と桶屋(誇張話)
あったてんがの。
あるろこに桶屋があったと。
酒屋の大きな桶のたがが切れたんだんが、たががけをしていたら、そのたがが切れて、ピーンとはねた拍子(ひょうし)に、桶屋はてんじゅく(天竺)へはね飛ばされたと。
そこはかんなり様の屋敷で、かんなり様が出てきたと。
「おまえ、どこから来た」
と聞くんだんが、桶屋は
「おら、桶のたがが切れてはね飛ばされて来た」
とようたと。
かんなり様は
「そらあ、いいとこへ来た。ここ久しいこと雨が降らんで、百姓は困っているすけ、雨を降らせようと思うたが、あいほうしるもんがなくて困っていたどこだ。おめえ水まいてくれ」
とようて、八つ、太鼓をゴロゴロとはったくてんがの。
桶屋はそのあとからザアザア水をまいたと。
下を見たゴロゴロバシャバシャの夕立だったてんがの。
干し物を取り込まんばならねえととんで出る。
子どもは、裸でいると、かんなり様がへそをぬくすけ、早く家に入れととんで行く。
道を歩く人は、耳を押さえて木の下にとんで行くやら、大騒ぎだったと。
桶屋は面白くてどうしょうもない。
そのうちに、雲の間から滑って下へ落ちて、お寺の大きな木に引っかかって、降りることもならんで、
「助けてくれ、助けてくれ」
とようたと。
ほうしたら、和尚様が出てきて、見たら、木のしんぶら(木のいちばん上)に人間が引っかかって助けを呼んでいる。
和尚様は
「小僧、小僧。あの人間を助けんばならんすけ、村のもん呼んで来い」
そうようて、和尚様はでっこいふろしきを持ってきて、その四すみを力の強いもんが持って、
「木の上の人、ここへ飛び降りれ」
とよわしたと。
飛び降りたれば、四すみを持っていた人は、みんな額(ひたい)をぶつけて、目から火が出て、その木をヒノキとようようになったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<誇張話>をテーマとしたお話です。