新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
夢買長者(夢買長者)
あったてんがの。
あるろこへ、若い男が二人あったてんがの。
村を出て旅稼ぎしようとでかけていったてんがの。
いいかげんあえんで、ここらに一休みしょうと休んだてんがの。
ひとりがねころんでいたてんが、すんま(すぐ)ねぶって(眠って)しもうたてんがの。
ほうしたれば、ねぶった男の鼻の穴から、ハチが一匹プーンとたって、いいかげんめでから(たってから)、もどってきて、また鼻の穴の中に入ったてんがの。
ねぶらんね男はこれを見で
「こらおかしい事らねか」
と思っていたと。
ほうしると、ねぶっていた男が目覚まして、
「おら、おもしい夢を見た。佐渡が島の、あるでっこい(大きい)お寺の庭に椿の木があって、その中の白い椿の下につぼが一つ埋まっていて、その中に金や銀がいっぺい(たくさん)ある夢らった」
とようたと。ほうしたら、ねぶらんかった男が、
「おらに、その夢売ってくんねか」
とようて、金出して買ったと。
その夢買った男は、そこから別れて、佐渡が島へ渡って、なんとかとよう、でっこい寺、さがし当てて、和尚に
「おらこと寺若いショにつかってくんねか」
頼んだてんがの。和尚様も
「そうだな。おらとこは、ちょうど庭を掃いたり、そこら掃除しる若いショ欲しいと思っていたとこだ。いいことだすけ、なじょうも(どうぞ)、そうしてくれ」
とようんだんが、そこの寺の若いショになって真剣に働いていたてんがの。
ほうしているうちに雪が消えて春になったてんがの。
赤い椿が咲いている中にたった一本白い椿が咲いているてんがの。
男は、その白い椿の根っこを掘って見たれば、金や銀の入ったつぼが出てきて、和尚様にも、夢を売った男にも、貧乏な村のものにも幾らか分けてやって、てめえ(自分)はごうぎしんしょうが良くなったてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<夢買長者>をテーマとしたお話です。