新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
もととりやま(水神の国)
あったてんがの。
ある山にほらあながあって、村のもんはお客のおぜんやおわんを借りていたと。
ほらあなの前に行って、手をポンポンとたたいて
「ほらあな様お願いします。おぜんを五人前、おわん五人前貸して下さい」
と願えば、ちゃんと貸してくれたと。
借りたショはきれいに洗ってなしておくがだと。
この村に欲深じさまがいて、おぜんとおわんを借りたと。
あんまりきれいだし、長いので
「こらあ、なさんでおれのものにしよう」
と何日めても(たっても)なさんかったと。
それから、村のショが頼んでも、出てこないと。
「こらあ、だれかほらあな様を怒(おこ)らしたもんがいる」
とようろも、じさは知らん顔していたと。
秋になって米がとれたんだんが、じさは馬に米俵つけて町に売りに行くと。馬がほらあなの前へ行くと、グングン穴の中に入って行くと。
じさがほらあなの前に立っていると、穴の中であはははと笑う声がしたと。
「おぜんとおわんのかわりにこの米もろうて置く。これで元が取れた」
とようたと。
それでもととりやまとようようになったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<水神の国>をテーマとしたお話です。