新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
宝の袋(宝の呪物)
あったてんがの。
ばさが宝の袋を持っていて、なんでも出していると。
その家で嫁をもらったら、嫁がその袋を見て、欲しくなったと。
ある日、嫁がその袋を盗んで実家へ持っていったと。
それからばさの家は貧乏になって、犬と猫を飼っていたろも、食わしていくことができんなったと。
ある日、ばさは、犬と猫に
「ねらねら、おらこは、嫁に宝の袋を取られてしもうて貧乏になって、ねらを飼っていることが出来なくなってしもうた。ねら、嫁のどこにいって宝の袋を取ってきてくれ」
とようたと。
犬と猫は、それをきいて家を出ていってしもうたと。
犬と猫は、嫁の家のがんぎ(縁側)で、みんなが寝るのを待っていると、そのうちにみんなが寝たと。
嫁が入る寝間を見たと。
犬は猫に
「猫、猫、なあは、家に入られるすけ、うちへ入って、宝の袋持ってこい」
とようたと。
猫は、家に入って嫁の寝床にいったと。
嫁は宝の袋をたんすの中へしもうて置くと。
猫はたんすを開けらんねで思案していたと。
そうしると、それをネズミが見て、
「今夜の猫はどうもおかしい」
と思うて猫のそばにいったと。ほうして
「猫、猫、おまえはなに思案している」
と聞いたと。そうしたら、猫が、
「ネズミ、ネズミ、聞いてくれ、嫁がばさの大事の袋を盗んできて、その袋を取りにきたろも、その袋は、たんすの中で取ることができねで、困っているが、おまえ、とってきてくんねか」
と頼んだと。ネズミは
「よしおれが取ってきてやる」
とようて嫁の寝床へ行って、たんすガリガリかじっていると、嫁が目を覚まして、棒で
「このじきしょう(畜生)」
とたたいたと。
ネズミは逃げて、ちっとめると、またガリガリとかじって、とうとうたんすに穴あけてしもうたと。
ネズミは、宝の袋をくわえて、猫のどこへ持ってきたと。
猫は、喜んでネズミに礼ようて外へ出たと。
犬が外で待っていて、袋を持って川のどこへきたと。犬は、
「おれは泳がれるすけ、おまえ、おれにばれ(背負われ)れ」
とようて、猫が犬の背中に乗って川をこいで行ったと。
それを子どもが見て
「犬が猫をぶって泳いでくる」
と笑ったと。
猫がニャオンと鳴いたら、口にくわえていた宝の袋が川に落ちて流れていったと。
猫はせつながって(困って)追っかけて行くと、ちょうどカメがいて、その袋を拾うてくれたと。
犬と猫がその袋を持って、ばさのどこへ来たと。
犬と猫はばさのどこで一生大事に飼ってもらったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<宝の呪物>をテーマとしたお話です。