新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
かんなりさまの子(誕生話)
あったてんがの。
あるどこへ、百姓の男がいて、田草取(たなくさと)りしていたてんがの。
そうしたら、かんなり様がピカピカ光って、ゴロゴロ鳴ると、男はおっかねんだんが(おそろしいので)、木の下へ行って立っていたと。
そうしたら、ピカピカゴロゴロブチンと、かんなり様が落ちたと。
男はたまげて、両耳ふさいで、うつぶせになっていたと。
ちっとめたら、かんなり様が止んで
「ああ、いかった。おっかなかった」
と目を開けてみたら、頭に二本の角おやしたかわいげの、かんなり様の子が立っていたと。
その子が両手をついて、
「どうかお願いします」
とようたと。男は
「なんだ」
と聞いてみたら、
「おら、空から落ちてきたから、あの川の舟に水をいっぺえ入れて、笹の葉をいれてくれ。そうせば、空へ上がられる。そうしてくれれば、おまえさんに男っ子を授けてくれる」
とようたと。男は
「よし、おれに付いて来いや」
と川端(かわばた)に連れていったと。
川の舟に水をいっぱい入れて笹の葉を入れてくれたと。
そうしたら、かんなり様の子がその舟の中に入って、笹の葉っぱで水を掻き回したと。
ほうしると、べと色の雲がパーッとてんじゅく(天竺)へ上がったと。
そうして、それから男の家に男の子が生まれたと。
男の家では
「かんなり様がようた通りに男の子が生まれた」
とようて、喜んだと。
その子はでっかくなって、力持ちで利口な子になったと。
そうしたら、お寺の和尚様が「おれの寺によこせ」
というんだんが、お寺にやったら、真剣に学問したと。
お寺の鐘つき堂に鬼が出て、みんながおっかんがってだれも鐘つきに行く人がいないと。
その男の子が
「そうせや、おれが鐘をついてやる」
とようたと。お寺のショが
「おめえ、おっかんねえか」
とようろも、
「おっかんねえ」
とようて、ようさる(夜)、鐘つき堂に行ったと。
そうしたら、ほんとの鬼が出で、男の子の首筋をつかんだと。
男の子が
「なにしるや。おら鐘つかんばならんすけ、待っていれや」
とようと、こんだ男の子の頭をつかんだと。
男の子が「待っていれてがんに、待たんねか」
とようて、その鬼の頭をつかんで
「おめえ。どっげの顔しているかおれに見せれや」
そうようたら、鬼もたまげて、逃げて行ったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<誕生話>をテーマとしたお話です。