新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
三匹のアブ(夢買長者)
あったてんがの。
あるどこへ商人(あきんど)がいたと。
その商人が友達と二人して山へ遊びに行ったと。
二人は山でさんざん遊んで、疲れたんだんが、けつおろして(尻おろして)休んでいたと。
友達が
「おら、眠くなった」
とようてそのまんまゴロンと寝転んで、寝入ってしもうたと。
商人は山の景色を眺めながら寝入らんでいたと。
ほうしたら、寝入っている友達の鼻の穴から、アブが一匹出てきたと。
ちいっとめると、また戻ってきて鼻の穴に戻ったと。
またアブが鼻の穴から出ていって戻ってきたと。
「これはおかしいな」
と思って友達を起こしたと。友達が
「おれはいまおもしろい夢を見た」
とようんだんが、
「どっげの夢だ」
と商人が聞いたと。友達は
「山のふもとにお堂があって、そのお堂に金色のアブが三匹いて、そのアブが出たり、入ったりしている夢を見た」
とようたと。商人は
「そうか。その夢をおれに売ってくれないか」
と頼むと、友達は
「夢なんかただで見るもんだから、欲しけや、くれらあ」
とようで、商人は幾らかの金を出してその夢を買ったてんがの。
商人がお堂のどこ(ところ)へ行ってみたら、アブが三匹出たり、入ったりしていたと。
そのアブは金色のきれいなアブだったと。
商人はその三匹を笠でとって家に持ってきたと。
一匹はお寺に、一匹はお堂の中に、もう一匹は自分の家に置いて毎日お参りしていたと。
そうしたら、商いが繁盛しで大金持ちになったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<夢買長者>をテーマとしたお話です。