新潟県の名人級の語り部を選定し収録した越後の昔話CD。語りの達人と言われる古老が地の方言で語る貴重で楽しい新潟県民話語りの醍醐味をご堪能ください。民話ファンや昔話の語り部を目ざす方は是非聞いてみたい昔話CDです。

三の夢

高橋ハナむかしがたり

新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。

三の夢(夢買長者)

あったてんがの。

あるどこに大きな呉服屋があってそ、その呉服屋は、おおぜいの番頭を使っていたと。

その中へ、三とよう男がでっち奉公していたと。

ここの主人は夢が大好きな人で、元日に

「二日の初夢を見たら聞かせてくれ」

とみんなにようたと。

三日になって、主人が

「おまえ方、二日の初夢見たもんがあったら聞かせてくれ」

とようろも、三だけが

「おら、夢見た」

とようだけで、他のもんは、だれも夢見なかったと。主人が

「三、おまえ、どっげな夢みたか、教えてくれ」

とようろも、三は、見た夢をえーて(いっこう)いわんかったと。

いくら主人が

「ようてみれ」

とようてもいわん。

「それじゃ、おれがその夢を買うすけ、ようてみれや。

いくらやろうか。二十両やろうか」

とようてもいわん。

「じゃあ、五十両だすすけ、ようてみれや」

とようてもいわん。

主人は、ごうにやして、

「よし、おめえ、そんげんようこときかねば、俵の中へ入れて、ぶちゃって(すてて)しまう」

とようても、三は、いわんかつたと。

主人は、ごうにやして、番頭に

「三を俵に詰めて、浜ばたへ置いて来い」

といいつけたと。

ほうして、三は、俵に詰められて、浜ばたへぶちゃられたが、そこへ、鳥がきて

「三、三」

とよぶてんがね。

「おい、三、んな(お前)、夢見たてが、おれにきかせてくれや。そうせば、俵の縄をほどいてやるが」

とようて、俵の縄をほどいてくれたと。ほうして、三に

「おい、三、夢聞かせてくれれば、宝物くっる(くれる)」

「なに、宝物だと、どっげ(どんな)の宝物だ」

とようたれば、鳥が筆みたいな小さな棒を出して、

「これだ、これだ。これで、『江戸へいげ』とよえば、ツーッと行ってしまう。『大阪へ行け』とよえば、ツーッといってしまう。なんでも、自分の好きなようになる」

とようたてが。ほうしたれば、三は自分の見た夢を聞かせねうちに、

「その宝物、おれにちょっくら、貸してみれや」

とようて、鳥から取ってしもうた。ほうして、

「大阪へとんでいけ」

とようて、大阪へとんでいって、

「大阪の鴻之池(こうのいけ)のお嬢さんのへそのめぐら、ぐじぐじせい。ぐじぐじせい」

とようたてが。

大阪の鴻之池のお嬢さんがからだじゅうに、カイカイ(かいせん)が出来て具合が悪くなって、へそのめぐらがぐじぐじするてが。

ほうして、あの医者、この医者にかけるども、どこへかかっても、えーて(いったい)なおらんと。

三は、毎日、

「大阪の鴻之池のお嬢さんのへそのめぐら、ぐじぐじせい。ぐじぐじせい」

とようていたてんが。

お嬢さんは、だんだんあんばいが悪くなったてが。

「これは、医者にかかっても、なおらんが、どうしたら、よかろうか」

と心配しるろも、ますます悪くなるばっかだったと。

ほうしるんだんが、こんだ、高札(こうさつ)を立てたと。

そこには、「お嬢さんの病気を治したものには、なんでも好きなもんやるし、娘の婿(むこ)にしる」

と書いであったてが。

ほうしたら、三がきったねえ格好(かっこう)して、

「高札について参りました」

とようて、鴻之池の家へ行ったてが。

三があんまりきったね格好だすけ、

「こんげのがんに、見てもらってもどうしょうもねえ」

と思ったろも、

「まあ、みてもらえば、いいこてや」

とようことになって、三は、何も見ること知らねえろも、お嬢さんの手の脈を見たり、いいかげんにあれ見たり、これ見たりしていたと。三は

「水のみに行く」

とようて、自分のからだのあかを丸めて

「これを飲めば治る」

とようてやった。

三は、家にきて、その筆みたいな宝物に

「大阪の鴻之池のお嬢さんのへそのめぐら、ちょいとようなれ」

とようて、ちょいと左へ回したと。

ほうしると、お嬢さんのあんばいがちぃっとよくなったと。

三は、次の日も、鴻之池へ行って、お嬢さんのからだを見るまねをしては、家に帰って、その宝物の筆のような棒に

「お嬢さんのあんべい(ぐあい)、さっとよくなれ」

とようたと。

次の日もまたそうしているうちに、日もだんだんたって、お嬢さんのあんばいは、だんだん良くなって、しまいには、くるっとよくなってしもうたと。

ほうして、三は、いい着物着て、いい男になって、お嬢さんと一緒に花見に行ったてが。

それは、三が、正月二日に見た初夢で、それが正夢になったてが。

いきがさけた。

おはなし

……読み比べてみたい昔話

  1. 白椿の下のかながめ
  2. 初夢
  3. 夢買長者
  4. おはぎの夢
  5. 三匹のアブ

共に<夢買長者>をテーマとしたお話です。

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