新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
くずの葉の子別れ(異類女房)
あったてんがの。
侍が殿様のお供をして狩りにいったてんがの。
狩りで追われたキツネが侍の足元に来て、小さくなって震えていたと。
かわいそげになって、ほどこ(ふところ)に入れて隠してくれたと。
ほうして、人のいないとこで、放してやったと。
それから、何日かして、国に残して来たくずの葉姫が訪ねてきて、一緒に暮らしているうちに子どもができて、名前を童児丸と名付けたと。
童児丸が大きくなった時、国元から、ほんとうのくずの葉姫が訪ねてきたんだんが、侍はびっくりしたてんがの。
外に姫を待たせておいて、家に入り、女房を見れば、外のくずの葉姫とそっくりだったと。
外の姫に話して、二人で家に入ると、女房はもういなかったと。
女房は助けたキツネが姿をかえていたんだと。
びょうぶに筆で
「恋しくば訪ねてきてみよ篠田が森」
と書いてあったと。
それから子どもを連れて、篠田が森にいったんてんがの。
そこで元の女房の姿が出てきて、
「この玉は、おれの一番大事の物だが、童児丸にやってくれ、これを耳に当てると、鳥や獣の鳴き声がよく分かる」
とようて、くれたと。
童児丸が大きくなって、ある日、カラスがあまりにさわぐんだんが、もらった玉を耳に当てると、京のカラスと大阪のカラスが、京のカラスに
「京都じゃ、なにか変わったことがないか」
と聞くと、京のカラスが
「京都では、いま霧が一杯で、何も見えない。町中大騒ぎしている」
とようと、大阪のカラスが
「その霧を賀茂川へ切り出せば直る」
とようたと。
童児丸がこれを聞いて、みんなに知らせ、大勢で賀茂川に切り出し、京の町は助かったと。
童児丸は、これで出世して、偉くなったと。
いきがきれた。
……読み比べてみたい昔話
共に<異類女房>をテーマとしたお話です。