新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
さとり(異類交流)
あったてんがの。
あるどこへきこりがいたてんがの。
山へ小屋立って木を切っていたてんがの。
今日のうちにこの仕事どうでも終やさんばならんと真剣に仕事をしていたてんがの。
ほうしたれば、仕事が終えないうちに日が暮れてしもうたてんがの。
枯れ木を持ってきて火をたいていたてんがの。
「もうちっとせば、おしまいになる。まあ、一服しよう」
と火に当たってたばこを吸っていたてんがの。
ほうしたれば、一つ目の化けもんが出てきて、火に当たっているてんがの。
なんだかおかしなもんが出てきたなと思うたら、その化けもんが、
「じさじさ、おめえの思ったことを当ててみようか。なあんだ、おかしなもんが出てきたなと思ったのし」
とようたと。ほうしると、きこりが
「おれの思うこと、いんな悟(さと)ったな」
と思ったてんがの。
その化けもんが
「じさ、いま、なんだ、おれの思うことんな悟ったなと思ったのし」
といったてんがの。じさが
「こんげのやつ、かもうていらんね」
と思うたてんがの。化けもんが、
「じさ、おめえ、今、こんげのやつかもうちゃいられんと思うたのし」
といったてんがの。
こんげの化けもん、早く帰ればいいと思うたら、化けもんが
「じさ、おら早く帰らんぞ」
とようたてんがの。
その時、燃えていた火のおき(懊)がピーンと跳ねて、一つ目の化けもんの目にぶつかったてんがの。
ほうしたれば、化けもんがたまげて(おどろいて)、
「人間てや思わんことしるもんだな。こんげのどこへいらんね」
とゴンゴン逃げていったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<異類交流>をテーマとしたお話です。