新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
ヘビ婿(異類婿)
あったてんがの。
あるどこにつぁつぁとかっかがあったと。
かっかはでっこい腹して川へ洗濯にいったと。
洗濯していると、川の中で洗濯物引っ張ってはなさねと。
かっかは
「こらまあ、おごとら。大事の着物だがんに、だれだか知らねえが、この着物放してくれ。おまえ、おれの腹の子が欲しければ、生まれたら、くれてやるすけ、放してくれ」
とようたら、放したと。
かっかは、うちへ行き、つぁつぁにこのこと聞かせたと。つぁつぁは、
「そうか、妙なこともあるもんだなあ」
とようたと。
それから、女の子が生まれたと。
だんだんでっかくなって、十八になって、きりょうがいい娘になったと。
春になって、友達と花見にいったと。
花見の帰りに船に乗ったと。
船が川のまんなかまでくると、ギツンと止まって動かんなったと。船頭が
「これは不思議だ。前に出ようとしても、後ろにさがろうとしても、動かん。この船に乗っている人は、みんな手ぬぐいをさげてくれ。その手ぬぐいが川の中に沈んでいったら、その人は、川の中に入ってくれ」
とようたと。
そうして、みんなが手ぬぐいをさげたと。
みんなの手ぬぐいは、流れたども、娘の手ぬぐいだけは、沈んでしまったと。
船頭は、娘に
「おまえだけ船を降りてくれ」
とようたと。
娘はやだがって、入らないと。船頭は、
「やだろうが、おまえが入らないと、みんなが死んでしまう。この川に大蛇がいて、おまえが気に入ったのだ」
とようんだんが、仕方なく川へ入ったと。
そうしたら、船がスルスルと動いで、みんな無事に家に帰ったと。
かっかは、娘が遅くなっても帰ってこないから、友達の家に聞きにいってようすがわかったと。かっかは、
「あの子が腹にいた時、あんげなことがあった。あれは、大蛇だった」
と思ったと。
かっかが川へ行って娘の名前を呼んだら、娘は大蛇の姿で出てきたと。かっかが
「そっげの姿だとおっかなくて会わんねえすけ、元の姿で出てきてくれ」
とようたら、きれいな娘になってでてきたと。
「おれが腹にいる時、かっかが洗濯に行って、大蛇と約束したてんが、おれは大蛇の嫁になった」
とようたと。
かっかは毎日うまいもんこしらえて、川の端(はた)へおいてきたと。
ほうして、次の日行ってみると、きれいに食ってあると。
ある時、また娘の名前を呼んだら、かわいい子をぶうてきたと。
かっかはかわいい子ができたと喜んで、それから毎日念仏をもうしていたと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<異類婿>をテーマとしたお話です。