新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
木魂婿(異類婿)
あったてんがの。
あるどこへ、茶店(ちゃみせ)が一軒あって、そこへ娘がひとりいたてんがの。
そこのうちに男が遊びにきたてんがの。
ほうしるんだんが、母親が
「おまえ、あの男はどこのもんだろう。こんだ来たとき、聞いて見れや」
とようたてんがの。
ほうしるんだんが、その晩、男がきたんだんが、娘は
「おまえさん、どこの人だ」
と聞くろも、いっそよわんてがの。
つぐの晩、聞いたれば、
「おら、村外れのもんだ」
とようだけで、名前よわんてがの。
娘は、不思議なことだと思っていたろも、それ以上聞かんかったと。
それからも男は毎晩遊びにくるてがの。
その村外れにでっこいヤナギの木があったてんがの。
その木が切られて殿様の屋敷普請(やしきぶしん)に使われることになったてんがの。
その木が切られる前の晩、娘はその男がばかげに苦しむ夢見たてんがの。
娘は目を覚まして
「はてまあ、ふしぎだねか」
と思うていたと。
つぐの日に、なったれば、そのヤナギの木が切られたんがね。
ほうして、その木を殿様のどこへ引っ張っていかんければならん。
村中のショがいんな(みんな)出て、ダイモチに載せて引っ張っていくのだと。
その木が茶店の前にくると、ギツンとようていってえ(少しも)ずらんなった(動かなくなった)と。
いっくら押しても引っ張ってもずらねんだんが、
「まあ、どうしたがだろう」
と不思議がっていたと。
それを見て娘は
「あの毎晩遊びにきた男は、村外れだとようていたが、ようべな、ごうぎに苦しんでいたが、さてこのヤナギの木でなかったか」
と思って、赤いたすきかけて引っ張ったと。
ほうしると、ぐらぐらと木がずって殿様のどこへ行ったと。
殿様はその事を聞いて娘に褒美をいっぺえくださったと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<異類婿>をテーマとしたお話です。