新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
嫁と牛(異類婿)
あったてんがの。
あるどこへおっかさと娘があったと。
おっかさは毎日、山の上の神様にお参りして、
「おらうちの娘にいい婿が授かりますように」
とお願いしていたと。
お宮の近くにうすら馬鹿の男がいて
「おれが、あの娘を嫁にもらいたいなあ」
思うていたと。
ほうして、お宮の中に隠れて、おっかさが来るのを待っていたと。
おっかさが来ると、神様のまねして
「おれはこの神様だ、おれのようことを良く聞け。ここを出て一番先にあった男に娘を嫁にやるが良い」
とようたと。
おっかさは、喜んでお宮の石段をおりてきたと。
ほうしたら、その男が向こうからきて
「おめえさんの娘をおれの嫁にくんねせえ」
とようたと。おっかさは
「神様のよう事だ。こんげの男でも嫁にやらんばならんか」
と思うて娘にようたと。娘は
「やだ。やだ」
とよいながら、仕方なくゆくことにしたと。
嫁に行く日、着物着てかごに乗って行く途中に、かごやが、一服休みしているうちに眠ってしもうたと。
そこへ殿様が通りかかって、かごの中で花嫁が泣いているのを見て
「おまえなんで泣いている」
とようたと。
花嫁がいろいろ話すと、殿様は
「それはかわいそうだ。おれがいいようにしてやる。心配しるな」
とようて、家来に言い付けてかごの中に子牛を入れて、娘は殿様が連れでいかれたと。
かご屋は目を覚まして、かごの中に牛が入っているとも知らずに行ったと。
男は嫁がくるてんがんで、待っていたと。
かごがついて戸を開けて見たら、子牛がモウモウと出てきたと。
男は怒っておっかさのどこへ子牛を返しにきたと。
おっかさは子牛をかわいがって育てたと。
あるとき、子牛を町に連れていったとき、殿様の行列に遭ったと。
行列の中から
「おっかさん」
と呼ぶ声がしたと。
見たら、それは、自分の娘だったと。
殿様の奥方になっていたと。
いままでの話を聞いて、おっかさは、
「これもみんな神様のおかげだ」
と喜んだと。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<異類婿>をテーマとしたお話です。