新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
さかな女房(異類女房)
あったてんがの。
あるろこ(ある所)へ、独り者の漁師があって、毎日魚をとっては自分で食うだけの魚を残して、あとは海に逃していたと。
ほうしているんだんが、いつも貧乏だったと。
ある時、かわいげな女の子がきて
「おら、みなしごでどこへでもゆくとこがないすけ、ここへ置いてくれ」
そうようたてんがね。男は
「おらうちは貧乏で、おまえなんかおかんねえ」
とようろも、女の子は
「いくら貧乏でもいいすけ、置いでくれ。頼む」
とようだんが、
「仕方がねえ。おらうちへいれば、いいこてや」
とようて、その娘は男の家に住んで、ようく働いてくれたと。
ふたりはいつか夫婦になってしもうたと。
女は
「まんまつくるときは、みねでくれ」
とようて、ばかげにうめえ汁をつくってくれると。
男は不思議に思うて、あるどき漁に行ったふりして、台所の梁(はり)の上に上がってみていたてんがね。
女が、流しへ入って、桶に水くんで、その中にてめえの尻入れて、ゴシゴシと洗ってその水でお汁を作っているのだと。
男はあんまりたまげて、梁から落ちてしもうたと。
女もたまげて
「おら、もう見られてしもうたすけ、ここにいらんね」
というたと。男は
「勘弁してくれ。ここにいてくれ」
と頼むと、女は
「おら、おまえさまに助けられた魚だ。助けられたお礼にうまい汁のだしを出して、ごちそうを食わしたかった」
とようて、魚になって海へ行ってしもうた。
置いていった手箱の中に、金で作った櫛やかんざしがあったんだんが、男はそれを売って、大金持ちになったてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<異類女房>をテーマとしたお話です。