新潟県長岡市(旧三島郡越路町)の高橋ハナさんの昔話。昔話独特の語り調子と、いきいきしたリズムが分かるとお話が語り始めます。ぜひCDでむかしばなしを聞いてみてください。
天人女房(異類女房)
あったてんがの。
あるどこへひとらもんのあにがあったてんがの。
あるどき、野へ仕事にいったれば、三人の天女がセミの羽のような着物を脱いで水あぶり(水浴び)をしていたてんがの。
三人とも愛(いと)しげな天女だったてんがの。
あには
「あんげな愛しげな天女を、おらの嫁に欲しいもんだ」
と思うて見ていたてんがの。
そのうちにあには、その一人の天女の着物をこっそり隠しておいたてんがの。
天女は水あぶりを終えて着物を着ようとしたれば、一人の着物がねえてんがの。
二人の天女は天に上がって行き、一人の天女はせつなくなって泣いていたてんがの。
あには
「泣かんでもいい。着物がなければ、おらどこに、こいや」
とようて、家に連れていったてんがの。
天女はあにと暮らしているうちに、あにのかかになって、男の子ひとりできたてんがの。
その子が五つ六つになった時、とと(父親)が子どもに
「いいか、かかにいうでないぞ。あの天井にあるこも包みにはかかの着物がはいっているんだ」
とようてきかせたてんがの。
ほうしたれば、その男の子がかかに、天女の着物の包みを聞かせたてんがの。
ほうしるんだんが、ととの留守にかかは、その着物着て、天にいぐことになったてんがの。
「かか天にいぐな。いぐな」
と子どもがあんまりようんだんが、
「じゃあ、おめえとととは後から来いや。このキュウリの種を置いていくすけ、ととが帰ってきたら、その種を植えて、天まで届いたら、ととと二人で天に来いや」
そうようて種を一粒置いて、天に上がって行ったてんがの。
ととが帰ってきて、子どもに
「かかどうしたや」
と聞くと、子どもは
「かかは天に上がった」
とようたてんがの。
もらったキュウリの種をまくと、ズンズン伸びて、つるが天まで届いたてんがの。
ほうして、ととは、子どもぶってつるをたぐって天まで行ったてんがの。
天の国へ行って、かかを探して、三人楽しく暮らしていたてんがの。
ある時、かかが、
「畑の甘瓜決してもいでくれるな」
とようたてんがの。
ととはあんまりのどが乾いて、その甘瓜をもいだれば、もいだどこから、水がどんどん出て、大水になってそれに流されて、下の世界に落ちてしもうたてんがの。
いきがさけた。
……読み比べてみたい昔話
共に<異類女房>をテーマとしたお話です。